おうまさん

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KAWAI MP11 (ステージピアノ)を導入

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1. はじめに

私は、3歳から幼稚園卒園までKAWAIのスタンダードな電子ピアノを使用しており、それ以降は自宅でKAWAIのアップライトピアノを弾きながら、時にはコンクールやグレード試験でグランドピアノに触っていた。転居に伴いピアノを続けられなくなった後、ピアノの無い生活を日々送っていた。

さすがに趣味の一環であるピアノを全く触らないことも望ましくないため、ピアノ購入に踏み切り、今回はKAWAIのステージピアノと位置付けられている「MP11」を導入した。

本記事では、MP11を購入した背景と目的を述べ、他機種やグランドピアノ(Shigeru Kawai)との比較を交えながらMP11のレビューを行う。

 

2. MP11導入の背景と目的

現在は一戸建てに住んでいないため、ピアノを配置する場所と音自体に配慮する必要がある。従って、持ち運び可能な電子ピアノの導入が望まれた。組み立て式の電子ピアノは、一度組み立ててしまうと移動が大変な上に、ホコリ掃除などの保守性に課題があったため、軽量のポータブルタイプの電子ピアノを視野に入れた。

また、自身はクラシック系のピアノ演奏を主とするため、「家庭練習向け」「本物のピアノに近い鍵盤のタッチ」「鍵盤数88」を重要選定項目として設定した。なお、自動演奏機能や多音色などの付加価値的要素は導入にあたって無視したが、「グランドピアノに近い音色」はある程度欲しいと思っていたため、サブ選定項目として設けた。

これらをもとに導入検討に伴い、まずは低価格からハイエンドモデルまでの電子ピアノの調査を行い、条件に概ね合致したピアノの試弾を行っていった。

・低価格タイプの検討

はじめにコストパフォーマンスが高めな低価格の電子ピアノから調査を行ったところ、CASIO Privia PX-160とYAMAHA P-115が候補として挙がった。

秋葉のヨドバシで試弾させていただいたところ、PX-160とP-115の鍵盤のタッチはどちらも優れており、練習用として使いこなせそうな印象を持った。PX-160は鍵盤が「ポヨンポヨン」しており押した感覚が柔らかく弾力性があるため、しっかりと弾いている感覚であった。グランドピアノの打鍵感とは少し大袈裟な感じはするが、使いこなせばどんなピアノでも適応できそうな感じであった。また、印象としては全体的に鍵盤の見た目がシュッとしておりグランドピアノの前に座って演奏するような気持ちとなった。

一方、P-115は鍵盤が軽めで弾きやすいが上位グレード(P-255)にも気になり始めたため、この価格帯ではPX-160が候補となった。

カシオ 電子ピアノ プリヴィア PX-160BK ソリッドブラック

カシオ 電子ピアノ プリヴィア PX-160BK ソリッドブラック

 

 

 ・中価格ピアノからステージピアノの発掘

 5万以降からの価格帯を見ていくと、YAMAHA P-255やKAWAI ES8、ローランドのピアノが名乗りを上げてくる。ここからは、低価格帯で好評だったPX-160を基準として、タッチ感や機能を見ていくが、どれもドングリの背比べ状態で結局、電子ピアノとは何が良いのか分からなくなってしまった。

そこで、重要な項目と考えている「鍵盤のタッチ」についてもう一度調査することにした。すると、「木製鍵盤」タイプの電子ピアノはタッチ感が優れているという情報を耳にした。たしかに、これまで触ってきた電子ピアノは全てプラスチック製のものが多かったと共に、グランドピアノに近いタッチ感と質感を求めるならば鍵盤は木製にした方が良いということが分かったので、求める選定項目として新たに「木製鍵盤」を追加した。

上記の内容を基に、より調査をすすめていくと電子ピアノの中でも「ステージピアノ」という種類があることが分かった。

ステージピアノはどちらかといえば、家庭向けよりステージ上や音楽制作向けの電子ピアノと位置付けられている。しかし、一般の据置きタイプより可搬性に優れており、音自体や鍵盤の質感もよく、自宅練習用としても使用できる万能な種類でもある。

また、ステージ上での演奏を見据えているため、背面に種類豊富な音声出力端子が用意されている。従って、ピアノの音色は本体のスピーカではなく音声端子などを介して音を出力しなければならない。しかし、自身はオーディオシステムを構成していることもあり、XLR出力端子からヘッドホンアンプ(LUXMAN P-700u)へ接続すればピアノ音の高音質化が期待できる。個人的には、この辺りもステージピアノの魅力の1つと考えた。

ステージピアノは、自身が重要な項目として挙げていた条件にも近いものでもあるため、この中から木製鍵盤で評価の高い製品を選定することにした。

YAMAHA CP4 STAGE/KAWAI MP11/ROLAND RD-2000の選定

ステージピアノの代表的な製品は平均で約20万ほどであることが分かったため、今回は評価の高い3機種をピックアップしてステージピアノの選定を行うことにした。

どの製品も鍵盤のタッチ感や機能が優れており、このレベルであると個人による好みであるということを前提に、自身の印象をそれぞれ述べる。

YAMAHA CP4 STAGE

3機種の中でも低価格で軽量。タッチ感もよく、ピアノの音色もヤマハグランドピアノのCFXを搭載している、優等生で総合力のあるステージピアノ。そろそろ後継の新機種が出るのではないかと期待されている。

YAMAHA ステージピアノ CP4 STAGE

YAMAHA ステージピアノ CP4 STAGE

 

 

- KAWAI MP11

3機種の中で鍵盤構造に大きな工夫が見られ、タッチ感は自然で最強。特に、鍵盤を指で押す際のクリック感(レットオフフィール)が一番優れていると考える。鍵盤は重めだが強弱がつけやすくクラシックにも適用可能と思われる。音色はKAWAIグランドピアノの「Shigeru Kawai」から。重さが30kg台だが持ち運べるギリギリの許容範囲内。日本よりもヨーロッパなど海外での評価が高い。2018年2月、後継モデルとなるMP11SEが発表され、正常進化したが機能に大幅な差異はないように見受けられる。

 

 

 

ROLAND RD-2000

比較的新しい機種でとにかく多音色、多機能でステージ上や音楽制作に適していると思われる。タッチ感もCP4 STAGEと同様に良好。個人練習用として運用する場合は、機能内容をよく理解し宝の持ち腐れとならないようにする必要がある。ローランドはあまり理解していない部分も多く個人的に敷居は高い。

 

3. MP11試弾とグランドピアノとの比較

この時点でお察しかと思われるが、私はKAWAIの元生徒であったこともあり、導入ピアノはほぼMP11に傾いていた。一応、最後までYAMAHA CP4 STAGEと悩んでいたため、カワイの店舗にてMP11の試弾をしに向かった。同時に、ここでKAWAIグランドピアノである「Shigeru Kawai」の試弾も行い、MP11とのタッチの差を確認しようと考えた。

早速、KAWAI表参道に行くと営業の方が丁寧に対応していただいた。はじめに、MP11の近くにMP7も展示されていたため、試弾したところMP7は鍵盤を押すと「ストン」と落ちる感触であったがMP11はしっかりと弾力性がありながら「コトン」と落ちる感触だった。長い時間ハノンやベートーヴェンピアノ曲を弾かせていただきながら、製品についての話を聞いていると、やはり海外で定評があり多くの様々な動画でも取り扱われているようだった。

長い時間MP11を弾いている感覚としては、やや鍵盤が重い感じはあるが特に指へのストレスもなく楽しみながら演奏曲に浸れるものであった。

次に、Shigeru Kawaiの試弾を行った。グランドピアノが10台以上展示されている中で、私はSK-6とSK-7を弾いた。それぞれ400-660万ほどの価格帯である。

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グランドピアノとMP11の違いは3点ある。鍵盤の重さ、レットオフフィールの自然さ、パワーであった。

・鍵盤の重さについて

グランドピアノは調律次第で鍵盤の重さを変えることは可能だが、MP11の鍵盤は重めに設定されている印象を受ける。従ってMP11は音の強弱のメリハリをつけることが容易だが、演奏者の表現力が求められる機種であると考える。個人的には鍵盤は軽いよりも重いほうが有利であると見込んでいる。なぜならば、軽い鍵盤で慣れているといざ重い鍵盤でコンクールの本番を迎えるとなった際に、力不足さが出てしまう恐れがあるからである。実際にこれは幼少期に体験していることである。

・レットオフフィールの自然さについて

レットオフフィール(鍵盤のクリック感)については、グランドピアノの鍵盤は素直に自然に鍵盤が落ちていたが、MP11はそれより少し硬めの感触であった。しかし、タッチ感を重視している自身にとってはこれでも満足な感触である。(余談だが、MP11の鍵盤がよりグランドピアノに近付いた機種が据置き型の「CA98」であると考えている。)

 ・パワーについて

グランドピアノはやはりパワーがあり、電子ピアノでは表現できない音の幅があるように感じた。特に、鍵盤を強く押した際の迫力はグランドピアノならではであり、逆に実力差が完全に出てしまうものであった。この辺りは、実際のレッスン等で補えられるほかに、自身のオーディオシステムで音の増幅加減を調整しようと考えた。

 

以上の違いを見出しながらも、MP11は「確かなピアノへの再現度」と「弾く楽しさ」を持ち合わせている機種であるという結論に至りながら、最終的には決算の時期かつMP11SEも出たばかりで価格の面でも親切に対応していただき、このたび実店舗にて契約に至った。

 

 

 

4. MP11レビュー

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実際にMP11が自宅に届き、設置作業に入った。MP11は本体重量が30kg代あり、1人で机に載っける作業は本当に苦労した。重いぶん、弾く際に本体が大きく揺れることはなく安定性があるが、ピアノの位置を変更したい場合は2人体制で運ぶことをおすすめする。自身としても、1人での設置作業はもう行いたくない状況である。

付属品は、ピアノ本体のほかに楽譜台とペダルがある。どちらもしっかりとしたつくりであり、重さもある。※ブログトップに掲載している赤色の鍵盤カバーは別売り。

設置が完了した後は、ハノンを一通り弾いてみた。なお、ピアノのヘッドホン端子にHD650をアンバランス接続し、音を出力している。また、電源ケーブルLUXMANJPA-10000を使用している。音自体は非常に綺麗であり、篭った感覚は無かった。また、各鍵盤もタッチ感は前評判どおりで実際のピアノに近い演奏を行うことが出来た。

いくつか弾いていると、試弾段階ではあまり触れていない部分であった機能があることに気付いた。MP11は、ピアノの残響等の調整を細かに設定できる。以下に自身の設定例を示す。

・リバーブ(REVERB)の設定

オンにし、タイプをConcert Hall(コンサートホールの残響)に、PreDelay(残響がはじまる時間)を100.8msに、Time(残響の長さ)を1990msに、Depth(残響の深さ)を10に設定した。

・PIANOセクションの設定

PIANOセションでは、ConcertGrandモードに設定した。

Damper Resonance(ダンパーレゾナンスの音量)を5に、Stereo Width(ステレオ音の拡がり具合)を127に、Brilliance(音の明るさ)を0に、Touch(タッチ)をNormal(アコースティックピアノと同程度のタッチ)に設定した。

 

このように、鍵盤自体は重めでも音を出しやすく設定することも可能であるため自分好みのピアノをデジタル的に設定することができる。

 

演奏例 : 

4. まとめ

今回はKAWAI MP11導入に至るまでの背景を述べ、実際にMP11を弾いた際の印象について、グランドピアノの違いについて、導入後の設定例を示した。MP11やステージピアノに興味がある方向けに、情報共有が行えれば幸いである。電子ピアノは調律や乾燥剤などのメンテナンス費用が不要であることも利点である。腕と予算を検討しながら、様々な電子ピアノに積極的に触れることが必要であると考える。

今回の導入にあたって特に感じたことは、実店舗で製品を購入することの重要さである。特に、電子ピアノはサイズが大きいものとなるため配送による品質確保も求められる。今回は実店舗で購入したため丁寧に配送を行っていただき安心して導入が行えたが、ネット購入による配送中の故障もたびたび起こるようである。自身のオーディオ機器購入に際しても、今後は参考にしていく予定である。

自宅の構成について、今後はMP11とヘッドホンアンプを接続し以下のように構成していく。

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LUXMAN JPC-10000を導入 -BELDEN 1192Aとの比較

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1. はじめに

現在、自身の環境ではLUXMANを基軸として音響機器を構成しており、ケーブルも全てBELDEN 1192AのXLRで各機器を繋いでいる。音響ケーブル自体に拘りはこれまで無く、電源ケーブルのみを上位のもの(JPA-15000)に変更して運用していた。

電源ケーブルの変更によって、音自体の底力を引き上げることが出来ることは認識しており、その違いを感じることは容易である。しかし、高価なXLRケーブルの変更によって音質の違いを確認しても僅かな音質の差しか得られなく、コストパフォーマンスも悪く味付け程度のものだと思っていた。

従って、今回はXLRケーブルであるLUXMANのJPC-10000を導入し、得られる音質を探るとともにBELDEN 1192Aとの比較についてレビューを簡易的に述べる。

 

2. 接続環境

今回は、様々なパターンで音質を確認した。

①DA-06 --(BELDEN 1192A)-- P-700u -- HD650 バランス

②DA-06 --(LUXMAN JPC-10000)-- p-700u --HD650 バランス

③DA-06 --(LUXMAN JPC-10000)-- LS-X0i -- (1192A)-- p-700u --HD650 バランス

というダイナミック型の組み合わせと、

④DA-06 -- (BELDEN 1192A) -- C-800f -- (1192A)-- SRM-727A -- SR-009

⑤DA-06 -- (LUXMAN JPC-10000) -- C-800f -- (1192A)-- SRM-727A --SR-009

⑥DA-06 -- (LUXMAN JPC-10000) -- LS-X0i -- C-800f -- (1192A)--SRM-727A -- SR-009

 のコンデンサ型の組み合わせを用意した。*1

なお、DA-06/P-700u/C-800f/SRM-727Aには全て電源ケーブルJPA-15000を適用しているものとする。

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※JPC-10000は電源ケーブルJPA-15000よりもケーブルの太さが1.8倍ほどある。

 

3. 比較試聴

再生ソフトウェアはFoobar2000。音源は、欅坂46の不協和音(FLAC96kHz)。

※試聴  

不協和音

不協和音

  • provided courtesy of iTunes

 

はじめにダイナミック型で聴いた際の印象を述べる。

①DA-06 --(BELDEN 1192A)-- P-700u -- HD650 バランス

②DA-06 --(LUXMAN JPC-10000)-- p-700u -- HD650 バランス

③DA-06 --(LUXMAN JPC-10000)-- LS-X0i -- (1192A)-- p-700u --HD650 バランス

②のLUXMAN JPC-10000を適用すると、音全体が弾けるようによりダイナミックな雰囲気に包まれる。①のBELDEN 1192Aとの劇的な変化は感じられないが、造り出される音の印象が若干変化した。ドラムの音はより深く「バァン」「シャアン」と弾けるように鳴るとともに、Focal Utopiaが拾うような細かい音もより緻密に静かに鳴らすように見受けられる。LUXMANの音を継承しつつも、全体的な音質の底上げは感じられた。

反対に比較すると、①BELDEN 1192Aを適用すると、音全体が明るく直接に耳に訴えかけてくる音楽を奏でる。JPC-10000との価格差は大きく違うが音自体が劣化している印象は全く持たず、正直な音を常に鳴らし続けていると感じられた。

なお、③のXLRセレクタ(LS-X0i)を挟んだ場合でも大きな差異は感じられず、若干①よりも再現度は減った印象を持ちながらもブラインドテストで比較した場合、完全に意見が分かれるという印象であった。この場合は、JPC-10000とBELDEN 1192Aの良いとこ取りがうまく融合されたように思えてくる。

こちらの音質比較においては、音質の強化というよりかは「味付け具合の個人の好みによる」ものなのだなと認識した。

 

続いてコンデンサ型での印象を述べる。

④DA-06 -- (BELDEN 1192A) -- C-800f -- (1192A)-- SRM-727A -- SR-009

⑤DA-06 -- (LUXMAN JPC-10000) -- C-800f -- (1192A)-- SRM-727A --SR-009

⑥DA-06 -- (LUXMAN JPC-10000) -- LS-X0i -- C-800f -- (1192A)--SRM-727A -- SR-009

 基本的にはダイナミック型の①②③と同じ傾向だが、SR-009で音を聴くと低音の量感やテンションが大きくなったと感じる。途中、C-800fとSRM-727Aの間に1192Aが挟む形となっても音自体については多少JPA-10000の分も味付けされた結果となった。

⑤と⑥は②と③と同様の結果となった。

 

4. まとめ

今回は、LUXMAN JPC-10000を導入し、これまで機器間を接続していたBELDEN 1192Aとの比較試聴を行った。

1192Aは、音がフラットかつクリアで正直な音を出すのに対し、JPC-10000はオーディオらしい敷居の高い味付けした音造りをしているケーブルであると共に、奥行きのあるよりダイナミックな音を演出するケーブルであることが分かった。

BELDENというと、1192Aのほかに8412も評価が高いがこちらはDA-06とP-700uとのRCA接続で使用している。現在はD8000とFocal Utopiaでアンバランス接続を行っているが特に不満はなく、音自体が荒れている印象もない。

高級なケーブルにも多少音への変化があることが確認できたが、正直価格に見合う変化は少なく、電源強化が最も効率的であることにも気付かされた。

味付けしないフラットな音が好きならば、1000円代で購入できる1192Aでも良い気はするが、自身としても今後は更に敷居の高いオーディオらしい音にも触れていきたいと思う。今後またXLRケーブルが揃ったら順次展開していきたいと考えている。

LUXMAN AVケーブル JPC-10000

LUXMAN AVケーブル JPC-10000

 
ハイパーツールズ BELDEN 1192A XLRケーブル 1m EC-1192A-B-01

ハイパーツールズ BELDEN 1192A XLRケーブル 1m EC-1192A-B-01

 

 

*1:LS-X0iはXLRのセレクタであり、これにより音質に差異が発生するかの検証を行っている。

TAG Heuer S/elの魅力について

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1. はじめに

私は10年以上、腕時計であるタグホイヤーのS/elを愛し続けている。そもそもタグホイヤーとは、スイスの高級時計メーカーでありながらも、比較的手を出しやすい価格帯でスポーティなデザインから落ち着いたデザインなど幅広い種類の時計を展開している。

F1のアイルトン・セナや、テニスの錦織圭とスポンサー契約していることでも知られ、歴史とともにスピードと究極を制してきたブランドである。

私は、タグホイヤーがリリースしてきた時計のデザインの中でも、1980年台後半に登場し始めたスポーツエレガンス(以下、S/elという)のデザインが大好きであり、過去に5つ所有していた経験がある。

現在はクォーツ2つと機械式1つの計3つを所有しているため、本記事ではその魅力について述べる。

 

2. S/elとは

S/elの特徴は主に3点ある。

1) S字のブレスレット

人間工学に基づいたブレスで、S/elの最も特徴と言えるものである。実際に腕に装着すると、違和感を感じず装着していることを忘れてしまうほどの快適な着け心地である。

個人的には金と銀のS字コマが交互に配置されたブレスを好むが、これらの組み合わせは自由であり、銀のコマのみでブレスを構成することもできるなど比較的自由度の高い造りにもなっている。

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2) 200m防水

S/elはダイバーズウォッチとしても使え、防水機能を備えている。文字盤のガラス周囲にあるベゼルは反時計周りに「カチカチ...」と手で回すことが出来る。しかし、竜頭が浮いていたり、裏蓋を自身で開けた場合は、防水とはいえ文字盤やガラスが曇ってしまう。実際に、湿気によりインデックスの塗料が劣化している中古品もよく見られる。

以下の画像は、クォーツのS/elを自身で電池交換した際に撮影した写真である。S/elはメンテナンス性にも優れており、電池の交換やベルトの調整を含めアマチュアでも簡単に手入れが行えるがこの時点で防水機能は失われるため、メーカにメンテを依頼をするのが最善な手法となる。

(本時計のボタン電池SR927SWを交換したもの)

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3) 多種多様なS/elのデザイン

自身が所有しているのは、クォーツの「S95.213K」「S95.713K」とオートマチックの「CG-2121-R0」の3つであり、いずれもブレスやベゼルが金色であるが、全て色が銀色で統一されたモデルも存在する。また、クォーツやオートマチックのいずれかから選択肢があり、なおかつ三針タイプやクロノグラフの種類として豊富にある。その数は30種を超えると思われる。

なお、クロノグラフは型番が「CG」からはじまり、その後に四桁の数字が並ぶ場合が多い。例えば、CG-2◯◯◯からはじまるならば12時、9時、6時位置に3つのインダイヤルが並ぶモデルなどである。

※例外もあり、CG-◯◯◯◯-◯などモデルチェンジされているモデルもある。

この規則で様々なモデルをGoogle等で検索していくと、特に気になるモデルがヒットすることもある。私が今まで現物として見たことのないS/elのモデルが「CG-1125」である。恐らく後期に製造されたものだと思うが、文字盤に金色の円が中央に小さくあり、同時にインダイヤルの枠も金の枠で描かれている。

「CG1120-1」と似たモデルであるが、文字盤がグレーと金の配色が個人的に大変気に入っており是非とも一度見てみたい時計の1つである。

3. S/elの魅力

通常の腕時計のブレスは、革製のものであったり、ステンレスの長方形状の部品がいくつかに繋がって無難な種類が多い。しかし、最大の特徴であるS字型のブレスはもはや芸術であり、見て楽しむことも出来るほど強く引き寄せられるものでもある。

また、オートマチックのS/elにおいては当時のムーブメントの歴史に迫ることも出来る。自身のCG-2121には恐らく、代表的なクロノグラフのムーブメントであるETA7750が搭載されている。S/elの各々が整ったデザインを見ながら、当時の機械式時計の成立ちを考え、浸ることも趣がある。

最後に、S/elは特に90年代に人気となった時計でもある。当時放送されていた「古畑任三郎」の田村正和もS/elのアイルトン・セナモデル「S25.706」を装着していたと記憶している。特にそのモデルが見える古畑任三郎の回は、「ニューヨークでの出来事」や「さよなら、DJ」である。「さよなら、DJ」では実際に古畑がクロノグラフを操作しているシーンも見受けられる。

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4. まとめ

今回は、自身が気に入っているタグホイヤーS/elの概要について述べ、特徴や魅力について紹介した。S/elは現在、販売されていないが新たなモデルである「LINK」にそのデザインが継承されている。

タグホイヤー LINK」はS/elのブレス形状を継承し、S字のカーブをよりスタイリッシュに、平べったいステンレス製の素材で構成されている。特に、LINKのキャリバーSは個人的に好きなデザインであり、一時期購入を考えていたものでもある。

しかし、依然S/elの人気も衰えることもなく、様々な中古市場で多くのS/elが出回っている。比較的2万~10万ほどで購入できるため日常的にすぐ使用できる時計でもある。更にS/elは種類も多いため、前期に製造されたものや後期に製造されたものまで文字盤の形状や印字などが多岐にわたり、非常に歴史の奥深さも感じさせてくれる。

S/elは写真で見ると平凡な印象を受けてしまうかもしれないが、文字盤やインデックスを実際で生で見ると、その繊細さや輝く各部品にうっとりしてしまう時がある。他の時計もそうかもしれないが、私にとっては特別S/elが美しく芸術品のように思える一生の時計である。

クラシック系音楽のお気に入り曲10選

1. はじめに

私はピアノのレッスン中など、なにかのきっかけで印象深くなった曲や、テンポの速いクラシック音楽を好む。

今回は弦楽器がよく用いられるクラシック系の中から、個人的によく聴く「リピート曲」を10つ選抜したものを紹介する。紹介する曲はピアノソロやコンチェルト、オペラなど幅広く取扱う。

基準としては、明るく暗くとも激しさを持ち合わせている曲を意識している。

なお、曲の紹介順については特に意味はない。音楽のテストのような「当時の情景を想像して曲の感想を述べる」感じではないため、軽い感じで曲の流れを掴んで頂ければ幸いである。

 

2. 10選

- ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18 第一楽章と第三楽章

第一楽章 : 曲の中盤まで溜め。中盤で盛り上がる。しかし、その盛り上がりも長くは続かず、逆にそれが飽きさせない絶妙な時間となって何回もリピート。

第三楽章 : 第一楽章で感じられていた「寂しい世界」から一転、後半ではそれを継承しつつも、気分を取り戻すかのような盛り上げ方が癖になる。

スタニスワフ・ヴィスウォツキ指揮の演奏が好み。

 

- ルスランとリュドミラ 序曲

 明るく、気分が盛り上がる。個人的に1番好みで聴いていて楽しい。ヘッドホンのFocal Utopiaとの相性が良いと感じる。ムラヴィンスキー指揮の高速Verが好み。

 

- チャイコフスキー 1812年(序曲)

 曲の後半で大砲が用いられる豪快さで有名(殆どが打楽器で代替)。のだめカンタービレでは大砲の映像が映っている。クラウディオ・アバド指揮の1812年が好み。

 

- チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 第三楽章

ヴァイオリンといえばこれ。第一楽章の主題の方が有名だが、後半のハイスピードさと躍動感溢れる第三楽章が癖になる。ルスランとリュドミラ序曲の次によく聞く。

ナタン・ミルシテイン演奏のものが好み。(動画は別演奏)

 

- ベートーヴェン 交響曲第9番 第四楽章 (合唱)

合唱付きで1番ハマる曲。これは非常に有名な曲かと思われる。

バーンスタイン指揮の第四楽章が好み。(動画は別指揮)

 

- ヴィヴァルディ 四季 冬 (協奏曲第4番ヘ短調RV.297) 第一楽章

基本的にテンポがはやいのが好み。ヴァイオリンの美しさを感じさせてくれる流れるような曲。

 

- ショパン エチュード Op.10-4

練習曲だが曲の美しさが充分に感じられる。こちらは自身も弾いた経験があり、弾きこなすまで多くの時間を費やしてしまったものでもある。

曲の最後については弾いていて楽しく、あまり難しさもないように感じるが、曲途中のダブルシャープが飛び交う16分音符が非常に辛かった記憶がある。「そういえば練習曲だった」と我に帰ってしまいながら演奏者にとっては辛く、聴いている方からすれば美しく感じる複雑な曲である。

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- ベートーヴェン ピアノソナタ第14番 月光 第三楽章

弾いていて爽快感と達成感が生まれる曲。とにかく最初が格好良く、聞き惚れて自分も必死になって練習をした作品。満足な演奏は未だできていないが、個人的に終わりの見えないどこまでも続くピアノソナタで飽きを感じさせない。

なお、この曲がモチーフとなっているJ-POPが℃-uteの「夢幻クライマックス」。革命のエチュードと月光が混ざっており、初めて聴いた時は圧倒された。革命は音が下がっていくが、月光は音が上がっていくといった対比も趣がある。

夢幻クライマックス/愛はまるで静電気/Singing~あの頃のように~(A)

夢幻クライマックス/愛はまるで静電気/Singing~あの頃のように~(A)

 

  

- 夜の女王のアリア (歌劇 魔笛より)

稀に「難曲」とも捉えられるオペラ。私が小学生の時は歌えたが、今は全く声の高音が出なくなった。 曲自体は暗いが、退屈がなく最後まで緊迫して聴けるので好み。

 

- 誰も寝てはならぬ

爽快感のあるオペラ。後半の壮大な展開が好み。フィギュアスケートの曲にもよく使われているので馴染みのある曲だと思われる。

 

3. まとめ

今回は、クラシック音楽でよく聴く音楽を10つ紹介した。クラシックに精通している訳ではないため、好きな曲を偶然見つけては弾いたりリピートしている。従って、新たな曲を見出すのに時間が掛かる。今後、これらを上回る曲に出会えればと思っている。

今回紹介した曲はそれぞれSR-009やUtopiaとの相性がよく、時にD8000で聴くと余韻のある上質な雰囲気を演出してくれる。また、機会があれはHD800でも聴き直してみたい。

アニソンも良いが、たまにはクラシックで耳を癒やすオーディオ生活も良いかもしれない。

 

STAX SR-009

STAX SR-009

 

 

ハイエンドヘッドホンで聴く「ヨドバシカメラの歌」

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1. はじめに

オーディオヲタクは、試聴を行う。ローエンドからハイエンドまで幅広いヘッドホンを店頭に並べ、快く試聴させてくれる場所の1つが「ヨドバシカメラ」である。

自身もヘッドホン、アンプ、アクセサリ導入に際してはヨドバシカメラを利用させていただくことがあり、特にP-700uやSR-009導入に至るまで数回、「ヨドバシカメラマルチメディアAkiba」にお世話になったことがある。

今回はその敬意を表し、現在導入中のヘッドホンを用いて「ヨドバシカメラの歌」を聞き、その音質について感想を述べる。すなわち、この記事でのリファレンス音源は「ヨドバシカメラの歌」である。

なお、リパブリック讃歌は記事内で取扱っていないためご了承いただきたい。

 

2. 比較環境

アンプやヘッドホンには以下の環境を用意。特別ゲストとしてFocal UtopiaとD8000についてはアンバランス接続、その他はフルバランス環境で比較する。ダイナミック型と平面駆動型はP-700uに接続し、コンデンサ型はSRM-727Aに接続する。

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またヨドバシカメラの歌の音源は、家電量販店のCMソングや店頭ソングだけを集めたコンピレーション・アルバムである「エレクトリックパーク」からヨドバシカメラの歌をWAVエンコーダで44.1kHz/16bitとしてPCに取込み、Foobar2000で再生を行う。

エレクトリックパーク

エレクトリックパーク

 

 

3. 比較試聴

6つのヘッドホンでヨドバシカメラの歌を聴いた。なお聴いた結果は、感想を述べるとともに、その音楽の聴きやすさや相性の良さの観点を含めて、5つ星で個人的な音質評価も行う。

① HD650 ★★★☆☆

基本的に淡々となっている等、音全体についてはまったりだが、想像以上に音場があり、 十数万円相手のヘッドホンに引けを取らない。改めてコスパが高いヘッドホンだと実感した。人によっては篭りと捉えられることもあるが、自身の印象としては音自体は重厚でなめらか。わりと長時間聴いていられるタイプでおっとりしてしまう。今後もリファレンスと成り得る安定型のヘッドホン。

ポイント : 標準的なヨドバシ

 

② T1 2nd Generation ★★☆☆☆

基本的にキラキラした音を奏でる。ボーカルや高域がうまく抽出され綺麗に鳴るが、それ以外の音が何故か籠もり気味に聞こえるようになってしまった。アンバランス接続だと高域については結構耳に刺さる場合もある。人によって好みがはっきりと分かれるため試聴必須のヘッドホンであるとも言える。

ポイント : クセのあるヨドバシ

 

③ TH900mk2 ★★★☆☆

ダイナミックにヨドバシカメラが展開される。相変わらずシャカシャカ、ベースの低音までドシドシ鳴る。直接的に音を訴えかけてくるので気分は盛り上がる。Utopiaもテンション高めだがそれとはまた違ったタイプの迫力である。人数多いところで大迫力でドンドンシャカシャカしている雰囲気、このヘッドホンはいつもそんな世界観で、それで良いのである。

ポイント : 景気の良いヨドバシ

 

④ Utopia ★★★★★

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店内で流れるスピーカーの近くで聴いている感覚だが、通常店舗で聴く感覚よりも音場が広く音も繊細である。ベリリウム振動板のおかげか、他のヘッドホンで気付かなかった細かな裏の方で鳴っている「シャカシャカ」音が安定して鳴り続けている。

音場もあり、曲の中の特徴的な合いの手(てれってってー...等)においてもインパクトも感じられる。元気だが聴き疲れすることはない不思議なヘッドホンであることを再認識。シャリつきは全く感じられずしつこくもない。

ポイント : 通えるヨドバシ

 

⑤ SR-009  ★★★★☆

自宅にいるのにも関わらず、もはや店内にいる感覚で、音楽を聴いているという認識ではなく、「いま自分はヨドバシカメラにいるんだな」という印象を受ける。SR-009の特徴でもある、自然な音の効果か。

音自体については 、Utopiaと同様に店内で流れている音のように違和感はない。大きな違いは、各々の音が繊細に元気に訴えかけてくるUtopiaに対し、あたかも何事もないように低域から高域まで綺麗に耳を伝わせるのがSR-009である。ボーカルも突き刺さることなく、オブラートにふんわりと。もはや高級作業用BGM。

ポイント : いつでもいられるヨドバシ

 

⑥ D8000  ★★★☆☆

どのヘッドホンよりもボーカルのエコーがかかるなど、音場が広く空間表現が上手い。間奏中はリズミカルに、それぞれの音がしっかりと分離されてモニター的な音が鳴る。低音に特化しているためベースの音もバランス良く音楽を支えている。

印象としては、店内で流れるBGMというよりも、実際に現場で演奏が行われているか、または録音現場に立会っているような音が鳴っている。

HD650との鳴り方の違いは細かい音の表現がD8000は繊細であることと、ボーカルがより耳に近く、かつ低音も上品に鳴らすのが特徴である。自身が理想としているヨドバシカメラの歌は、現場寄りでテンションが高めのイメージであったため星3つとしているが、音質は遥かに上位に位置付けられている。

ポイント : 敷居の高い上質なヨドバシ

4. まとめ

 今回は、ヨドバシカメラのテーマをリファレンス音源として様々なヘッドホンで比較試聴を行い、その印象を述べた。星の評価については、実際に現場にいるような音を個人的には好んだ結果となる。なんとなくポイントを交えて各ヘッドホンのイメージが事前情報として伝われば幸いである。

その他のヘッドホンについては所有していないため、一旦本記事で終わりとなるが、アップテンポを得意とするヘッドホンがあれば、ヨドバシカメラの歌と相性が良いと思われるため、ぜひ試聴してみたいと思っている。

私自身、ヨドバシカメラとの繋がりは全くなく、ただ「買う」のみであるが今後もお世話になる予定である。特にAkibaとさいたま新都心。Yes! Serendipity!

 

final D8000 FI-D8PAL 平面磁界型ヘッドホン

final D8000 FI-D8PAL 平面磁界型ヘッドホン

 
STAX SR-009

STAX SR-009

 

 

Final D8000を導入 -SR-009やUtopiaとの違いとは?

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1. はじめに

個人としては初の平面磁界型ヘッドホンである、Final D8000を導入した。

本記事では導入の目的を述べた後に、実際に自宅の据え置き環境で聞いたD8000の音質についてと、感想について述べる。また、D8000と他のハイエンドヘッドホンを比較し、相対評価を行う。

 

2. D8000導入の目的

目的は主に2つある。

① 平面磁界型を所有しておきたい

現在、大きく分けるとダイナミック型とコンデンサ型の2種類のヘッドホンを所有しているが、新たに平面磁界型も加えることによるラインナップの充実を図りたかった。

より種類を拡張していくことにより、音楽の序盤・中盤・終盤、隙のない表現を手に入れることができると考えている。

ダイナミック型ではFocal Utopia、コンデンサ型ではSR-009を揃えているため、平面磁界型でも同じような価格帯のヘッドホン導入が望まれた。

② 高い技術評価と数々の試聴経験

D8000誕生に至るまでの開発話を聞き、その技術に感銘を受けた。自身が特に注目した技術は最近だと、SONYのTA-ZH1ESになる。今までの常識にとらわれないような製品は愛着が湧くと共に、所有欲も満たされる。

また、そんな開発話を聞きながら2017秋のヘッドホン祭など数々の機会で試聴していく内に、何か縁のようなものを感じていた。

音質自体は、既にSR-009等の圧倒的な表現力で耳が慣れていたため、所有しているヘッドホンの他において特徴を見出すのに時間を要したが「とりあえず買ってみよう」という気持ちになっていた。

 

3. 音質

D8000をP-700uに純正のケーブルでアンバランス接続し、PC→HP-A8→DA-06→P-700u→D8000で音質をチェックした。なお、LUXMANの機器類には電源ケーブルJPA-15000を全て適用しているものとする。

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はじめに、音を聴いた際の印象を述べる。次に、SR-009やUtopiaをはじめとした音質の相対評価を行う。

再生ソフトウェアはFoobar2000。音源は、μ'sのLOVELESS WORLD(FLAC96kHz)。

※試聴 

LOVELESS WORLD

LOVELESS WORLD

  • μ's
  • アニメ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

① 音を聴いた際の印象

低音の表現に優れ量感が多いが、全体的に力強くバランスのとれた音を鳴らしている。これに伴い、とにかくパワーが有り、非常に躍動感のある音を創り出してくれる。

音のテンションとしては薄暗目で、かつ耳の周りを包み込むような感じを受ける。薄暗目というのは、決して篭っているわけではない。繊細ながらも通常の曲のトーンより重めでズッシリした、乾いた表現である。

ヴォーカルも離れすぎず、近すぎず周りの音と調和しており、まず聴き疲れすることは無い。

一言で表せばポップ。どのジャンルでも聴いていても心が踊るような感覚になる。

 

② SR-009との相対評価

試聴段階で気付いていたことではあるが、SR-009の音はしっとりと艶があるように聞こえる。特にSR-009はクラシックギター等の弦楽器系を耳に近くで生々しく舐めるように鳴らすため、クラシックとの相性も抜群である上、曲の中にソロギターが用いられる曲に対しても完全に余韻に浸ることが出来る。

対してD8000は①で述べた通り、全体的に乾いた音で弾けた音を出す。定位はD8000が幅広い。分かりやすくドラムの音などが左から右へ耳を伝う。

高音に対してはD8000はSR-009と比較して控え目に鳴らしている印象だが、低音は分かりやすくドシドシ鳴らしている。ただし、高音も伸びるところはしっかり伸びており、両者とも分解能は高い。音場はD8000の方が創り込めている感じだった。

聴き比べをしてみたが、どちらか篭っていると感じることは無かった。曲のはじめでは、D8000のスッとした音の入り方が印象的だった。それから徐々に力強さを感じていく。

 

③Utopiaとの相対評価

UtopiaはD8000とは異なり、曲のトーンとしては明るい。Utopiaは明るさとそのハイスピードさを持ち前としており、どんどん曲の終盤に向かって突き放していく。よって、音場としての迫力ではなく、ペースやテンションの迫力に特化している。

対してD8000は、低音やインパクトを全面に出していることにより、うまく音場を創り出し、曲の雰囲気を出すことが得意なイメージをもった。

低音はD8000の方が出ているが、Utopiaとは出し方が異なる。Utopiaは明るめの音を創りながらも、その土台として低音を添えているような感じである。D8000の低音は音の中に溶け込んであり当然で、あたかも自然に出ている。

こちらも聴き比べをした結果、どちらか篭っていると感じることは無かった。このクラスになると、音の量感はどれも凄まじいが、鳴り方や雰囲気で印象が左右される。

 

ここまでをまとめると、

・SR-009はアナログな優等生でちょっと懐っこい (曲のトーンは普通)

・Utopiaは元気っ子。足が速くテンションが高い (曲のトーンは明るめ)

・D8000は冷静だが懐が非常に厚い (曲のトーンは薄暗め)

となり、自身の環境の中でも使い分けがうまく出来そうである。

 

【その他参考記事】

 

④ TH900mk2との相対評価

D8000の後に聴くTH900mk2の音はスッキリしている。TH900は低音に特化しているが、確かに強調されているものの、D8000の迫力と低音の量感と比較するとやや差があるように感じる。TH900mk2の低音は奥行きがあり立体感はありつつも、時に周りのシャリシャリ音にかき消されてしまう時がある。しかし、D8000の低音は周りの音と完全に分離しており、立体感が常時直接伝わってくる。

TH900とD8000との違いは、一言で言えば「ドンシャリ」。とにかくただひたすらに盛り上げたい、気分をリフレッシュしたい場合はTH900mk2を選択するだろう。曲に対しての雰囲気を求めるならば、D8000だろう。

 

4. まとめ

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今回は、D8000の音質について述べ、更に代表的な各分野のハイエンドヘッドホンとの相対評価を行った。

D8000についても、Focal Utopiaと同様にバランスケーブルへの切り替えを随時行っていく予定である。その際の音の変化についても軽く本記事で追記できればと思っている。

目標としていたヘッドホンの導入は今回で収束した。ほかSUSVARAやLCD-4も音質については定評があるが、こちらについてはアンプ駆動力や運用保守の面で負担が大きくなってしまうため導入を見送っている。また、機会があったら比較試聴を検討している。

 

final D8000 FI-D8PAL 平面磁界型ヘッドホン

final D8000 FI-D8PAL 平面磁界型ヘッドホン

 
STAX SR-009

STAX SR-009

 

 

Focal Utopiaを導入 -LUXMANとの相性は良好

 

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1. はじめに

ハイエンドヘッドホンであるFocal Utopiaを導入した。

今回は、導入の背景とUtopiaの音質について述べながら、現在所有しているLUXMANのアンプとの相性についても触れる。

 

2. Utopiaの導入背景

導入背景は2点ある。

【1点目】

2017年7月より、LUXMANはFOCALの製品の取扱いをはじめた。私は、FocalとLUXMANを合わせると一体どんな音が鳴るのか非常に興味深かった。特に、Utopiaは「アンプを選ぶ」ヘッドホンとしても定評があり、その相性を確かめたかったのもある。

現在私の環境では、DACをDA-06とし、ダイナミック型でのヘッドホンアンプをP-700u、静電型でのアンプをC-800fとしているなど、LUXMANを軸としてオーディオ機器を構成している。

従って、Focalのフラッグシップ機とLUXMANとの組合わせを大変心待ちにしており、Utopia導入のきっかけの1つとなった。

f:id:umauma2011:20180128225947p:plain※現在の機器構成

 

【2点目】

 現在所有しているヘッドホンのほかに、全く新しい特徴のあるハイエンドヘッドホンを探していた。現時点、所有している各ヘッドホンの役割は以下のとおりである。

 機器名と役割 

 HD650 ⇒ 自身の基準点。かつピアノ等の雑多用

 T1 2nd Generation ⇒ 高音特化、ヴォーカル抽出

 TH900mk2 ⇒ 低音特化、迫力重視

 SR-009 ⇒ オールラウンド。自然と究極を追求

 

これらに付け加えるヘッドホンとして、「Final D8000」「Audeze LCD-4」「Focal Utopia」が候補として挙がった。2017秋ヘッドホン祭やポタフェス冬などで数々の試聴を繰り返した結果、一聴して最大の特徴を見出だせたのはFocal Utopiaだけだった。

 P-750uにFocal Utopiaをアンバランス接続して聞かせていただいたところ、実にスピーカーらしい音が耳を包み、繊細な音と圧倒的な表現力に驚かされたのである。

もちろん、D8000もLCD-4も音の表現力としてはハイレベルの域に達していると思っているが、この価格帯は個人の好みによるものとなる。

自身としては、SR-009を初めて聞いた時と同じような感覚(=新しい音質の発見)を提供してくれたヘッドホンがFocal Utopiaであり、「スピーカー」としての新たな役割を担える重要なヘッドホンになるだろうと確信した。

 

3. Utopiaの音質とLUXMANとの相性

UtopiaをP-700uにアンバランス接続し、PC→HP-A8→DA-06→P-700u→Utopiaで音質をチェックした。なお、LUXMANの機器類には電源ケーブルJPA-15000を全て適用しているものとする。

再生ソフトウェアはFoobar2000。音源は、乃木坂46インフルエンサー(FLAC96kHz)。

※試聴 

インフルエンサー

インフルエンサー

  • provided courtesy of iTunes

 

【音質】

低音から高音までパワフルに、極めて繊細に音を鳴らす。ヴォーカルは割と近めであり、うやむやになりがちな例えばシャカシャカした音が綺麗に鳴る。ベリリウム振動板恐るべし。基本的に、はじめから聞こえない音は無いという信頼感がUtopiaにある。

低音はTH900mk2よりは上品ではないものの、バシバシ奥深く鳴り、高音はシャラつくことがない。

SR-009でなんとなく表現されていた後ろの方で鳴っている音も決して大きく主張することなく解像度よく鳴らしてくれる。

音はどっしりというよりかは非常に見晴らしがよくクリア。しかし基礎はしっかりできている整ったサウンドを繰り広げる。明るく直接的に鳴らしてくれるので、そのあたりがスピーカーのような鳴り方と例えられるとも感じた。

まさにTH900とT1とSR-009の成分を融合させた感じで全体的にバランスのとれたポテンシャルの高いヘッドホンだった。

 

LUXMANとの相性】

 どこかの音に偏ることなく全体的にフラットに、ゆったりと鳴る。相変わらずドラムや弦楽器系をしっとりと直接的に鳴らしてくれるので強い。従って、聴き疲れすることはなくまったりと音楽を楽しむことができ、「そういえばLUXMANの音はこんな感じだったなあ」と振り返ることができた。

LUXMANのアンプが鳴らしきれていないということはあまり感じなかったが、更なるクリアさが欲しいと思った。この辺はバランス化と電源強化でカスタマイズしていく予定である。

所有している他のヘッドホンより、UtopiaはLUXMANの特性をよく引き伸ばせていると感じる。どちらかが足を引っ張ることもなく、互いに協調性のある音楽を創り出していると思う。

※ちなみに、P-700uとTA-ZH1ESではUtiouaの鳴り方が全く異なる。特にTA-ZH1ESではP-700uより低音が強調され、迫力が感じられる。更に、ソースによっては空洞にいるかのような鳴り方をする。

 

4. まとめ

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今回は、新たに導入したFocal Utopiaの音質とLUXMANとの相性について述べた。UtopiaとLUXMANとの相性は良好であり、今後も大いに活躍していくヘッドホンと成り得るだろう。

現在は、製品に付属していた純正のアンバランスケーブルを使用して聞いている段階だが、やはりバランス接続をメインとしている関係上、将来的には

・UPG001HP Ref. for FOCAL UTOPIA (Brise Audio)

・MH-DF12FU-4X15 (TiGLON)

・SilverDragon V3 Recable for UTOPIA (Moon Audio)

のいずれかのXLRケーブルを導入する予定である。

/* ------- 2018/4/12追記

⇒XLRケーブルを導入した。

----------*/

最後に、Utopiaはやはり見た目が美しい。TH900の漆も日本風で風情があると思えるが、Utopiaもヨーロッパのお洒落さを全面に出した、特に振動板を覆う金属の網が全てを物語っている。

見た目、音質をも兼ね揃えたUtopiaをまずは是非とも試聴いただき、その内容を味わって頂ければ光栄である。

Focal Elear & Utopiaヘッドホンスタンド

Focal Elear & Utopiaヘッドホンスタンド

 

 

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