1. はじめに
Final D8000を導入してからは、これまで製品に標準付属のアンバランスケーブルで音楽を聴いていた。以前にFocal Utopiaをバランス化したので、D8000も同様にバランス化を行いたいと考えたため、今回バランスケーブルの導入に至った。
本記事では、「Brise Audio UPG001HP Ref. for Final」の選出理由や音質、D8000純正のアンバランスケーブルとの違いを述べる。
2. 「Brise Audio UPG001HP Ref. for Final」の選出理由
D8000のバランスケーブルは基本的に、Finalがシルバーコートケーブルとして別売りで販売している「C093 LP15CXCL」「C093 LP30CXCL」がある。
しかしその他に、サードパーティ製としてFinal純正端子を採用した各種ケーブルがBrise Audioから販売されている。本記事で紹介するBrise AudioのUPG001HP Ref.は各種ケーブルの中でもハイエンドヘッドホン向けのリケーブルとして位置付けられており、これをD8000に適用したものとなる。
個人的にヘッドホンケーブルの長さはそこまで必要としないため、1.5m以下のタイプで4極XLRのものが候補となった。この条件のもと、私がBrise Audioの「UPG001HP Ref.」タイプのケーブルを選出した理由は3つある。
ア. シルバーコートケーブルの納期が遅め(受注生産の1.5mの場合:数週間~数ヶ月)であり、Brise Audioを選んだ方が圧倒的に速い。
イ. 事前にヘッドホン祭でD8000とUPG001HP Ref.の組合せを試聴しており、アンバランス接続したD8000との音の差が顕著でボーカルがより近くに迫っていた。
ウ. Focal Utopiaで「UPG001HP Ref.」を導入した実績があり、自宅の環境において音が良い方向に出ることは想像ができていた。
※実際に前回のUtopia用のUPG001HP Ref.を注文した際は約1週間で商品が到着し、今回のD8000用のUPG001HP Ref.は数日で商品が到着した。
3. 試聴環境
D8000をLUXMAN P-700uにバランス接続し、PCからFoobar2000にて各種音を再生した。なお、DA-06、P-700uには電源ケーブルとしてJPA-15000を接続しているものとする。DA-06とLS-X0iの間はLUXMAN JPC-10000でXLR接続し、LS-X0iとP-700uとの間はBELDEN1192AでXLR接続している。
4. 音質
再生ソフトウェアはFoobar2000。音源は、μ'sのHeart To Heart(FLAC96kHz)。
※試聴
UPG001HP Ref.を適用したD8000は、音全体がより明瞭になり、ひとつひとつの音をがっちりと捉えて出力している。というのは、アンバランスの場合だと中低域が全体的にスカスカで音の解像度はあるが、あと一歩手が届かないような印象を持っていた。
ところがバランス化した場合はそれらの音を鷲掴みにし、加えて周りの細かな音(シャンシャン,キーン等)をより明瞭に拾い、埋もれないようにうまく空間を創り上げていると感じた。LUXMANと合わせている効果もあるかもしれないが、ドラムなどの跳ねる音はアンバランスよりも弾けて出ている。ただし、ドンシャリにはならずにアンバランスで奏でていた重厚な高貴な音を継承しつつ、バランスを保ったまま分離感が増して全体的なポテンシャルが底上げされていると考えられる。
また、狙い通りボーカルがより耳に迫ってきており、周りの音に被されにくくパート分けの部分においてはメリハリが向上し、抑揚のある歌詞を楽しむことができるようになった。特にD8000の特徴である低域はアンバランスの場合だとボーカルより前に大きく主張する時があるが、バランスの場合は低域の迫力が下がることなく、低域の重心が付加されてボーカルと同レベルで対等な位置関係で表現されている。
上記では中低域や低域について触れたが、高域においても若干の変化が見られた。バランスにすると、これまでキンキン目に聞こえていた箇所が若干抑えられ、更にその部分についてエコーがかった余韻を出すようになり余裕が生まれたように思えた。これにより、バランス化によってD8000が表現できる音の幅が全域において一段階上がったように思えた。
最後に、バランス化したD8000の音の雰囲気について述べる。以前、本ブログでは「音のテンションとしては薄暗目、繊細ながらも通常の曲のトーンより重めでズッシリした、乾いた表現」と印象を総括した。結論から言えばクリーン電源導入後やバランス化後も、大きくその印象は変わることなく本来のD8000の特徴が継承された状態で除々に音のグレードアップが図られたきたことを確信した。D8000は音楽を低域を基礎に支えているような感覚からか、音の厚みはUtopiaやSR-009と比較しても強力であり、かつ音場もそれなりに解像度高く提供してくれるため本当にモニターライク的、ソースによっては躍動感が感じられる音楽を楽しめると考えている。
※その他の声
うおお、バランス化したD8000のMIRACLE WAVE衝撃。千歌がバク転する箇所の低域「ドゥーン」に震えた。映画かよ
— うまうま (@umauma2010) 2018年6月17日
AqoursのMIRACLE WAVEの曲の中で、「みんなきっと分かるんだね」の歌詞のあとに続く重低音「ドゥーン」がある。TA-ZH1ESとTH900mk2を組合せた際の「ドゥーン」が一番印象的だったと思っていたものの、D8000でしかもP-700uで余韻、奥行き、重厚が完璧な「ドゥーン」を出せたことにより興奮している感想である。
5. その他
本記事は、Brise AudioのUPG001HP Ref.の選出理由と導入後のバランス化したD8000の音質を述べた。
Utopiaに続き今回もUPG001HP Ref.の導入により納得のいく音質に仕上がり、自身が目指す環境の姿である「ドンシャリしない解像度の高い躍動感のある音楽」にまた一歩近づいたと思う。導入ヘッドホンのバランス化も収束したので、いよいよ自身の環境もPCオーディオからネットワークオーディオに移行しようと構想中である。D8000もまだまだポテンシャルを秘めているヘッドホンであるということが分かり、今後も周りを取巻く環境にメスを入れていき、更なる目的の音楽像に向かって邁進していければ良いと考えている。