1. はじめに
秋のヘッドフォン祭 2018で今回も様々なハイエンドヘッドホンを試聴した。個人的に興味のある比較的新しいヘッドホンについて実際に試聴が行えたので、本記事では「試聴したハイエンドヘッドホン」の紹介と、「聴いた際の印象」を述べる。
2.試聴ヘッドフォンラインナップ
2018年春のヘッドホン祭で試聴したヘッドホンは6つある。
・SRM-T8000 + LINE4 DACボード (STAX)
・EMPYREAN (MEZE)
・Edition11 (ULTRASONE)
・D8000 * model406 (final * マス工房)
・LCD-4z (Audeze)
・ANANDA (HiFiMAN)
3. SRM-T8000 + LINE4 DACボード (STAX)
STAXブースでは、ヘッドフォン祭直前にアナウンスされた拡張DACボードについて、現時点で試作版であるそうだが試聴できたため試聴に立ち寄った。SRM-T8000のリリース時に予めLINE4の拡張スロットが設けられており、フォノイコライザかDACを設けるかもしれない、という話があった。今回はDACが追加されたということでSRM-T8000のLINE4からSR-009とSR-009Sを試聴した。
これまで聴いたことのあるSRM-T8000越しの音と大きく変わらないSTAXらしいナチュラルな音域と滑らかな感触が特徴的であった。細かな繊細さはあまり感じず、自宅のDA-06→C-800f→SRM-727A越しで聴く力強さとはまた異なる柔らかい感触であった。
背面の点灯は、DSDなど入力音源の情報を示すものであったと記憶しているが、詳細な対応サンプリング周波数は聞けなかったため、改めてリリース時などにお伺いできればと感じている。
特に、DACに求められる性能は年々上がっており近年ではDSDのみならずMQA対応と謳う製品も登場してきた。今後のブラッシュアップに期待したい。
4. EMPYREAN (MEZE)
Mezeブースでは、春のヘッドフォン祭 2018でもEMPYREANが出展されていたが、再度音質確認のために秋のヘッドホン祭でも試聴を行った。聞く話によると、近日中に詳細な情報を発表するらしく、春に比べて内容がより固まっているように見受けられた。最終的に11月下旬頃までにはリリースしたい旨のお話を伺えた。
春のヘッドフォン祭と同様にPCの中に「ラブライブサンシャイン」の楽曲がいくつか入っていたため速攻で再生を開始した。今回アンプはE3ではなく、Questyle Audio CMA400iと思われる。なお、EMPYREANは事前情報通り2種類のイヤーパッドを取り付けでき、革とアルカンターラが付属している。前回は革で試聴したため、今回はアルカンターラで試聴を行った。
音質としては、やはり中域が特徴で同時に解像度が高く、中域が煙のように耳の周辺を包み込むようにブワァっと広がる感じが印象的だった。これは自宅の環境では中々表現し辛いものとなり、SUSVARAでも「全域において横には広がるが左右に360度音は包み込めていない」形となり、非常に印象深いヘッドホンであることを再認識した。
EMPYREANのハウジング部分色はシルバーやブラウンなど様々なカラーリングがこれまで登場していたが、実際にリリースするものはブラックであったり価格の面でも3000ドル以降変動する旨の内容を伺い、実際の発売に至るまで変更点は今後あるかもしれないが、引き続き注視していきたいと考えている。
meze empyreanは改めて聴いて気になる存在。色はブラックのみで異なるカラーは別途オリジナルで出す方針と、価格は$2,999ドル推移だが輸送費等を含めると変動あり、詳細な情報は来週を目処に詳しく発表と聞きました。 pic.twitter.com/xeu2sD1Ndq
— うまうま (@umauma2010) 2018年10月27日
5. Edition11 (ULTRASONE)
ULTRASONEブースでは先日、Edition11の発表があり既に話題となっているヘッドホンの試聴を行った。自身としてはEdition15以来のULTRASONEを試聴することになる。
今回、「DAVE」を通して聴くEdition11と、「PATHOS InPol Ear」を通して聴くEdition11を試聴した。
DAVEを通して聴くEdition11は、やはり解像度が圧倒的であり細かい線までもがはっきりと出ており爽快感があった。PATHOS InPol Earを通して聴くEdition11は、繊細で音が細い印象であった。
どちらのアンプを通しても共通することは、Edition11自体の音が細く、例えばヴァイオリンなどの楽器を鳴らすのがうまいのではと考える部分があった。なぜならば弦を弾く音が良い余韻として聞こえ、解像度重視な印象を受けたからである。
解像度といえばUtopiaを連想するが、どちらかといえば音の厚みや情報量はUtopiaが優れているものの、Edition11はそれよりも音をより細く職人的に音を抽出して鳴らす傾向があるように思えた。
個人的には、Edition11の音色は好みであり価格の面でも同価格帯のヘッドホンを上回る性能を持っていると感じている。
6. D8000 * model406 (final * マス工房)
個性的な組み合わせでD8000を聴く機会はこれまで無かったが、finalブースにて今回良い機会として試聴を行った。自身としてもD8000を自宅にて保持していた時期がありLUXMANを軸として音楽を聴いていたが、今回その音の差を一言で表すならば「清らか」である。ノイズ感が一切なく、まるで音がろ過されたの如く素直に耳に音が入ってくる印象であった。特徴的な低音はシルバーコートケーブルの影響か、若干控えめであったが総括すれば心が洗われる時間を堪能した。
7. LCD-4z (Audeze)
Audezeブースでは、以前から気になっていた低インピーダンスのLCD-4zを試聴した。以前にLCD-4を試聴したが相変わらず、LCD-4系は音が濃密で耳にしっとりと張り付いてくる音が楽しめると感じた。
今回、Audezeブースの方は非常に優しくLCD-4と今回試聴したLCD-4zとの音の違いについても教えていただいた。鳴らしている時間にもよるが、LCD-4は音が柔らかいがLCD-4zはまだ音が尖っている印象であると聞き、試聴レベルでは中々捉え辛い内容だったため、次回以降試聴する際はそれをインプットとして臨もうと考えている。
8. ANANDA (HiFiMAN)
HiFiMANブースでは、これまで試聴したことのないヘッドホンを試聴しようと、話題のANANDAを選択し試聴した。実際に自宅のSUSVARAと音質の違いについて確認すると、SUSVARAは空間的に音を鳴らす傾向であるが、ANANDAは直接的に音を鳴らすヘッドホンである印象を受けた。例えば、ANANDAの低音は直接耳に響く感じで表現しているが、SUSVARAは耳から少し離れた位置で隙間を感じた状態で低音を鳴らすイメージがある。
今回、JPOPを試聴したが音自体は滑らかでANANDA特有の空気感を感じることができた。全体的に感度もよく曲をとにかく綺麗に、オールジャンル鳴らすにはもってこいのヘッドホンであると感じた。
結論 :
SUSVARAのあとに聞くHiFiMAN ANANDA pic.twitter.com/7yUIlhpFak
— うまうま (@umauma2010) 2018年10月20日
9. まとめ
今回は、2018秋のヘッドホン祭で試聴したヘッドホンと、試聴した際の印象についてそれぞれ述べた。
今回は高価格帯のヘッドホンというよりかは、10-20万推移のヘッドホンが主に注目されている状況で、種類も多くなり自身の気に入った機器を探すことも難しくなっている状況である。その中で、今回のヘッドホン祭で特に感じたことは、音の入口をより強化しなければならないことである。なぜならばEdition11とDAVEの組合せなど、各ブースごとに音の入口も工夫しており、自身もその魅力に取り憑かれてしまった部分があるからである。
具体的に述べると自宅の環境ではDAC強化と同時にネットワーク化が必要と感じており、今の音質に不満はないものの、より深い解像度を追い求めるためにはヘッドホンの変更だけではなく基礎的な入口部分に手を入れないといけない気がしたのである。
今年は、クリーン電源やハイエンドヘッドホンを導入し音質向上に寄与しやすい部分について手を加えていった。来年は音質に寄与し辛くとも、上記で述べたDACなどの見直しに注力していきたいと考えている。