1. はじめに
静電型ヘッドホンの代表的なメーカとしてSTAX(スタックス)がある。静電型は、振動膜を両側から固定電極で挟み、電極に電圧をかけた際に生じる静電気によって振動膜が動き、なんやかんや音が鳴るというものである。
静電型は音が繊細で、かつ自然な音の空間表現が特徴であるが、その繊細な分、ダイナミック型と比較してノイズが発生する場合がある。静電型は壊れやすくはないが、デリケートな製品でもあるため、比較的丁寧な取扱いが必要である(その分、ご認識の通り良い音が鳴り人気がある)。
自身としても、静電型のヘッドホン「SR-009」を使用していく中で、初回導入時にノイズが発生し、環境を見直したりサポートにいくつか問合せを行ったことがある(現在は解消済)。
実際に、ノイズが発生したことによってどういった確認の観点があるかをインターネット上で質問しているケースも見受けられる。従って、本記事では自身が静電型ヘッドホン(以下、イヤースピーカーという)を使用している中で、ノイズが発生した場合に確認した点や、実際にSTAXサポートより回答があった確認観点を、チェックリスト項目として紹介する。
2. 故障かな?と思ったら以下のチェックを実施
■「ブーン」などのハムノイズ
周りに電気を発する機材が無いかや、身体中に静電気を纏っていないか確認する。特にこれらが見受けられなければ、ドライバーユニットのアース端子やドライバー上部の金属部を手で触れてみる。手で触れた際に「ブーン」などのハムノイズが消えた際は、アースを取ることを推奨する。同時に、機材の故障ではない。
アースは、完全に大地アースでなくとも、プリアンプやクリーン電源についているアース端子に、ドライバーユニットのアース端子とをアース線で接続すれば殆ど解消される模様(公式回答)。そもそも、プリアンプについているアース端子はアナログレコードのアース端子とで組み合わせて使うのが一般的であるが、自身は、ドライバーユニットのSRM-727Aのアース端子と、プリアンプのC-800fのアース端子とをアース線で接続している。アース線は、材質や太さについては基本的なものであればなんでも可(公式回答)。
また、これは公式回答ではないが、他の対処事例として、サッシの金属ネジ部分にアース線で繋ぎ暫定対応していたり、コンセントのアース部分に直接、アース線で繋いでいる例も見受けられた。
■「プギャ」という音が装着時に聞こえる
静電型ヘッドホンを装着する際に、強く耳に押し込んだりすると鳴る事例。機材の故障ではない。耳に押し込んだ際にイヤースピーカーの振動膜が電極に接触することで鳴ると推測している。
SR-009説明書より抜粋
■ハムノイズだけではなく「ブツブツ」「ズザザ」「バリバリ」などのノイズが曲の再生時以外にも片側chから出る、ドライバーユニットを手で触ってもノイズが出続ける
・ドライバーユニットやイヤースピーカー周りに電気を発する機材が無いかを確認する。
・真空管のドライバーユニットであれば、真空管の寿命がきている可能性がある。新しい真空管に取り替えてあげることも考慮。
(それでもだめなら↓)
・DACとドライバーユニット間で接続しているRCAケーブル/XLRケーブルについて、LとRが逆に接続されていないか確認する。また、ドライバーユニットへXLRでINPUT接続しているのにも関わらず、RCA側をINPUTとしていないか入力状況を確認する。
(それでもだめなら↓)
・一旦、ドライバーユニットの電源を切った状態で、イヤースピーカーからノイズが発生するかを確認する。ノイズが出続けるのであれば、イヤースピーカーの発音体か、イヤースピーカーのケーブル部分に不具合がある可能性があるため、サポートへの問合わせが推奨される。ケーブルの根本を触り、ノイズが発生すればイヤースピーカーのケーブル根本部に不具合ありの可能性。
※片側だけからノイズが発生することは基本的にあり得ない(公式回答)。
(それでもだめなら↓)
・(ダイレクトモードにしていない場合=ボリュームパスしていない場合)電源を入れている最中かつ曲が再生されている状態で、ドライバーユニットのボリュームを絞り、ノイズが発生するか確認する。ボリューム周りでノイズが発生した場合は、ドライバーユニットまたはイヤースピーカーの故障が疑われる。サポートへの問合わせが推奨される。
・そもそも、ドライバーユニットに音が辿り着く前に、DACやプリアンプ側が故障していないか確認する。自身の環境をもう一度見直した上でのサポートへの問合わせが推奨される。
■ 急に片耳の音が小さくなった (音が左右でアンバラとなった)
まずはドライバーユニットに繋いでいる静電型ヘッドホンのケーブルを抜き差しし、再度音を再生してみる。滅多に発生せず、抜き差しで音が出たのであれば、基本的に問題はないと考える。公式回答によると、「原因は不明だが一時的に接触不良が発生した可能性がある」。
(それでもだめなら↓)
上記の対処で音がでなければ、静電型ヘッドホンの発音体か、ドライバーユニットに原因があると思われるため、サポートへの問合わせが推奨される。
3. まとめ
今回は、STAXのイヤースピーカーでノイズが発生した際の確認項目を述べた。自身で事象を解決できない場合は、製品をSTAXへいきなり送付する前に、まずサポートへ問合せを行い、事象の共有を図ることが重要である。問合せに際しては、具体的な事象と製品名を述べた上での連絡がスムーズな事象の解決に繋がると考えられる。
(※1番いけない例↓)
(※正しい例↓)
製品をSTAXへ送付する際は、送料は自身で負担し、簡単なメモ紙を製品と共に添付すると良いと思われる。
STAXのサポートは丁寧かつ、製品知識が豊富で幅広い視野でアドバイスをいただくことが出来る。また、メンテナンス方法(ヘッドホンスタンドにキッチンペーパーを敷いてイヤーパッドの脂分を吸い取る、等)もいくつか紹介していただけるため、長く愛用するためのヒントとすることも出来る。
SR-009とSRM-727Aの修理返ってきました。今回もSTAXのサポートに大変良くしていただけました。修理箇所のほかにも埃清掃など細かい所にも配慮していただき自社製品への愛を感じました。 pic.twitter.com/duZZCvMXRJ
— うまうま (@umauma2010) 2018年6月2日
クラシックを問わず、様々な音楽ジャンルの高みを目指すオーヲタの信頼に、響きで応えるSTAX。イヤースピーカーを使用している中で、不明な点があった際に本記事が参考となれば幸いである。