1. はじめに
近年、オーディオ界隈はストリーミング再生が主流となってきており、ハードにおいてはワイヤレスによる音楽の楽しみ方が増えてきた。自身においても高級オーディオに触れてきた中ではあるが、世の中の流れ的にニーズがあるのは上記のような、シンプルかつ導入が楽な製品であるように感じられてきた。従って、今回は先日から注目していたスピーカー1台でほぼ完結できる「JBL 4305P」を早速導入し、その音質や導入効果を確認したので、所感を述べる。
また、シンプルな構成に付け加え、高級オーディオの中で体感した「電源」の重要さを踏まえてJBL 4305Pとクリーン電源である「LUXMAN ES-1200」を接続し、良好な電源環境の中で試聴した結果を報告する。また、JBL 4305PをChromecastで接続した事例を共有する。
2. JBL 4305Pの導入理由と接続環境
以下の記事にて4305Pについて導入を検討し、今回実際に導入が実現した。
AirPlay、Chromecast、Spotify、Bluetooth、USB、OPT、XLR、6.35mm、アナログAuxなどの多種多様な入力を備える、YAMAHAのNX-N500やFOSTEXのHP-A8等を彷彿とさせる柔軟さを見せている。近年のストリーミング再生を意識し、音源デバイスとスピーカーのみを用意すれば、再生環境が完結するという非常にシンプルな構成で可能な点が特徴的である。
私は1.で述べたように近年の傾向から円安や物価上昇の煽りも少なからずあるものの、ハードのワイヤレス化やシンプル導入がポイントとなっている部分に着目し、複雑な高級オーディオの構成からシンプルなオーディオ環境の構成を実現させるために、今回のJBL 4305Pを導入するに至った。
iphoneからAirplay経由でラジオも無線再生できる良い時代。
— うまうま (@umauma2010) October 26, 2022
今年買って良かったものにランクイン、JBL 4305P。 pic.twitter.com/vfaVp7ejBa
一般的には、4305Pのスピーカーであれば自宅の壁コンセントに直接電源ケーブルを差し込んで電源を供給して再生することも可能である。しかし、私はこれまで高級ヘッドホンオーディオの拘りとして「電源環境の良質化」という点をポイントとして機器の接続を構成していた。従って、今回は以下の図の構成でLUXMAN ES-1200からJBL 4305Pを接続し、各種電源ケーブルもJPA-15000やJPA-20000を使用して再生することとした。各種電源にLUXMANを使用した理由としては、JBLの音傾向として「低音域の厚み」が想定されたためLUXMANの中低域との相性を考慮して組み合わせることとした為である。
もちろん、電源に対する拘りがなければ音源と4305Pのみで再生が可能であるが、クリーン電源を間に介することで全体的に中域から高域にわたり、音自体に透明感や解像感を引き出し、ノイズ感が無くなり聞きやすくする狙いがあったためである。4305Pはワイヤレスで音の再生が可能であるため、XLRケーブル等での音質調整は外部によるDACからの接続が必要となる。しかし、それでは本記事で計画していたシンプル構成という要素から外れるため、音質が調整できるのは電源ケーブル、インシュレータ、スピーカー位置の調整程度となる。その中で、スピーカーのポテンシャルを引き出しやすいものが電源ケーブルとスピーカー位置の調整と考えている。
3. JBL 4305Pの音質
音源の再生経路はPC(roon)→USB→4305Pとした。注意点として、4305Pはroon ready対応製品であるもののroonのデバイス認証が降りていないため無線での接続がAirPlayやChromecast経由になる点である(2022/12/9現在)。※ハーマンインターナショナルに確認したところ、認証に向けて作業中だという。認証がおりた際にはフォームウェアアップデートで対応するというサポートの回答が得られた。
【2023/2/18追記】
Roon最新版にて、JBL 4305PがRoon Readyとして再生できることを確認した。Roon Readyで再生することにより、音の重さと透き通りが増して4305Pの能力をより引き出すことが可能と見られた。
JBL 4305P所有者に朗報。Roon partnersに4305Pが仲間入り。
— うまうま (@umauma2010) February 17, 2023
RoonアップデートするとRoon Readyが使えるようになるよ。https://t.co/XCZ5PY6C1d pic.twitter.com/2SA3BwGC4E
4305Pの音としては、第一印象として中低域に厚みがあり、それらがベースとなった上で高域が広がっている印象を持った。低音については、ヘッドホンとは大きく違う部分が「空気が振動する低音、身体で直に感じられる低音」という点で、ドォォンと目の前に迫ってくる感触が印象的であった。ヘッドホンで言えば低音の自然さが特徴的なD8000が代表的であるが、D8000の「ブォッ」という感触から更に何倍もの低い奥行きさと迫力が付加されたようなものに感じた。隣の部屋にいても低音の「ドォッ」という深い音が聴こえてくるほどの深さと言ってよい。
高域についてはきめ細やかな繊細さや明瞭な明るさという印象は無いが、あくまで前に出ず、自然に基礎の「中低域」のベース上で成り立っている感覚である。解像感についてもFocal Utopiaの明瞭なイメージとは一歩引いた、一枚ベールを挟んだ形での音の造りが感じられた。
一曲、例として再生すると宇多田ヒカルの「Can You Keep A Secret?」では、低音の一定のリズムが基本となったもと、ボーカルはそれに埋もれずに展開されて、ギターの旋律が均一に誤魔化すことなく再生された。中低域含め、各音に余白が設けられ分離感も良好であった。ただし、重心はあくまで低域よりであり音色は総合的に見てディープで、ボーカルはその上で成り立っている。従って、ボーカルの息継ぎやコーラス部分は誇張されずに最低限の描写で再生された。
また、 Grace Mahyaの「Sunny」では、ボーカルの「sunny」のサが刺さるヘッドホン・スピーカーがこれまでの経験上存在したが、4305Pではサ行の刺さりが無くボーカルが聴きやすいものだった。やはり、この曲においても全体的にドラムなどの低域が沈み込むスタイルで展開される一方で弾けたり、残響感を生み出したりするなど曲一つの中でも立体的で様々な表現方法がなされていた。金属音の鳴りも上品であり、ジャズの再生においてはリラックス、心地よさが印象付けられた音の造りとなった。
トータルで見れば、低域寄りのレビューとなったが高域は埋もれずに、ある程度の分離感が存在するため、個人的にこのスピーカーで聴きたい曲の1つとしてKOH+の「ヒトツボシ」が挙げられる。スピーカーの特徴である中低域を活かし、前奏が壮大ながらもボーカルは優しく、息遣いや静寂感が絶妙で統制が取れた再生がなされる。ピアノ含めた付帯音が共存し、音場も広い中で低域寄りの締まった内容で何度聞いても浸れる表現となっていた。
<再生例>
JBL 4305P参考音質(iPhoneX録画) クリーン電源LUXMAN ES-1200接続。
— うまうま (@umauma2010) October 27, 2022
実際には低音は動画の何倍もの深く、引き締まって弾んでいる。音場も更にあるのであくまでも参考程度。
-THE IDOLM@STER SHINY COLORS Fashionable pic.twitter.com/KLkHkGzZbd
4. Google Chromecast(Google Home)の設定で起きた問題
JBL 4305PをGoogleHomeで設定し、Chromecastで再生しようとするとスピーカーの名前がGoogleで設定した部屋の名前に置き換わる事象が発生した。GoogleHomeアプリ側で端末の名称変更を設定しようとすると、「クラウド接続エラー」または「制限があります」という旨のメッセージが表示され、Google側で名称を制御できないような形となった。注意してみると、AirPlay側にもGoogleで設定した部屋の名称が表示されていたため、そもそもスピーカーの名称がGoogleによって完全に上書きされた形跡があった。従って、次のような方法でスピーカーの名称変更を行うことで解決できた。
1. roonのオーディオ設定で、赤枠のデバイス情報からスピーカーの設定画面にブラウザ経由でアクセス。
http://【黒い枠で示したIPアドレス】/index.fcgi というアドレスでアクセスされる。roonが無い方は、このスピーカーに割り当てられたIPアドレスの特定をどうするのだろう?と感じた。GoogleやAirPlay側に記載もなく特定が難しいと思われるが、自宅PCやスマホのプライベートIPアドレスをもとに、第4オクテットを1ずつ増やしたり減らしたりして、総当たりでアクセスできるかを確認する方法となるかは不明。
2. Device Nameを変更する。
Device Settings > Device Name から、任意の名称を入力してSubmitする。
手順は以上。この他にもフォームウェアのアップデート確認の項目があり、スピーカー自体の制御を行うものがいくつか存在した。説明書にはこのような手順の掲載は無かったため、自力で発見できたのは良かった。
5. まとめ
今回は、JBL 4305Pの導入背景について述べ、その音質について確認した。全体的に自身の好む音色が再生された一方で、1点残念だったのは内蔵されているDACが、192kHz/24bitであることである。左右のスピーカー同士を繋ぐLANケーブルでのワイヤードリンクは192kHz/32bitまで伝送されるが、DAC自体は192kHz/24bitとなる。roonで32bitの音源を再生すると「ビット深度変換」で24bitにされロスレスではなくハイクオリティ再生となる点は注意箇所だった。また、roonでネットワーク経由のAirPlay再生を行うとAirPlayストリーミングとして44.1kHz/16bit音源でもロスレスではなくハイクオリティ再生となる点についても注意が必要である。Chromecastで接続すればロスレスが確保される形となるが、まずは、取っつきやすいシンプルな接続としてroon ready対応製品として早期なroonでのデバイス認証を期待することとする。
シンプルなオーディオ環境を構築したい方や、今後スピーカー導入を考えている方、JBL 4305Pについて情報を収集している方向けに情報提供ができれば幸いである。