1. はじめに
Focal Utopiaを導入し、音質に満足していたが本ブログでのレビュー記事で触れたように、音のクリアさ等に課題がありバランス化が望まれていた。
Utopiaのバランスケーブルにも様々な種類があるが、Brise Audioのケーブルは以前から気になっており、価格や技術的にもハイグレードな部類で説得力があった。
今回、そのBrise AudioのUPG001HP Ref. for FOCAL UTOPIAを導入しバランス化に至ったので、音質とUtopia付属のアンバランスケーブルとの違いについて述べる。
2. 試聴環境
UtopiaをLUXMAN P-700uにバランス接続し、PCからFoobar2000にて各種音を再生した。なお、DA-06、P-700uには電源ケーブルとしてJPA-15000を接続しているものとする。DA-06とLS-X0iの間はLUXMAN JPC-10000でXLR接続し、LS-X0iとP-700uとの間はBELDEN 1192AでXLR接続している。
3. 音質
個人としては初めて10万代のケーブルに手を出し不安であったが、一聴して音場の圧倒的な違いに驚かされた。
例えば右や左で交互に鳴るような曲や、右から左へ流れるような曲の分離感と表現力が高く事細かに音楽を造り出すようになった。この辺りはアンバランスケーブルだとなんとなく平坦で、音の解像力はあるが表現力に課題があったように考える。水樹奈々の「TESTAMENT -Aufwachen Form-」を聴いているとそのことをより実感する。
次に、曲全体の重心が低くなり、よりダイナミックに曲が再生されるようになった。特に低音もこれまで以上に重く、どっしりと構えるような空間を提供してくれる。しかし、このようなハイエンドのような音になると、少し眠たい感じが出てくる場合もあるが、弾ける音はしっかりと「パァン」と放出し、ボーカルも埋もれることなく適度なバランスを保ち続けている。
印象で言えば、これまでアンバランスケーブルによって元気で明るい少女が歌う元気な曲を慣らしてくれていたUtopiaが、Brise Audioのケーブルに変更したことによって「少女から成長した妖精に変化し、変幻自在に音を操る」ようになった。
なお、Utopia特有の「シャァン」や「カァン」などの繊細な音に対する表現力は衰えることなく、こちらもより強化され伸びのある音になっているように見受けられる。
最後に、Utopia付属のアンバランスケーブルと異なる点について述べる。違いを一言で言えば、抑揚を付けるのがうまくなったことである。バランスでは、アンバランスで引き出されていたポテンシャルを継承しながらも曲全体にキレが付加されメリハリが生まれ、盛り上げ上手となる。時にはぐわっと迫るような圧力、時にはまったりとしながらも、後ろの方で繊細な音をさらっと鳴らす余裕さまでも感じられる。
また、繊細さが増したことにより肝心な「音のクリアさ」についても向上したと考えるが、重心がアンバランスよりも低くなったことにより、音のトーンは明るめからナチュラルに変化したと感じられる(Final D8000ほど重厚にはならない)。前述の「少女から成長した妖精」と表現したのはこの辺りの違いからなる。
4. まとめ
今回は、Brise Audio UPG001HP Ref. for FOCAL UTOPIA (4極XLR)を導入し、その音質と付属のアンバランスケーブルとの印象の違いについて述べた。
Utopiaはまさに不思議なヘッドホンであり、ケーブルによっても大きく音を左右することが分かった。まだ聴きはじめて間もないため、時間が経つにつれてどのように音に変化が見られるか楽しみな状態である。
これまでHD650、T1 2nd、TH900mk2にてバランス化を行ってきたが、特に今回は一番違いを感じられる結果となった。結果的にリケーブルは成功と結論付ける。
Utopiaを聴いた後にアンバランスケーブルでFinal D8000を聴いた結果、音の表現力に壁がなく動じないほどであり、流石ハイエンド同士であるなと感じたが、流石にUtopiaのバランスとD8000のアンバランスだと音のパワーに違いが見られる結果となった。今後は、D8000のバランス化に注力していく予定である。