1. はじめに
人それぞれ、音質を左右すると考えられている要素は異なると認識しているが、私はオーディオケーブルの中において、電源ケーブルの強化が分かりやすく音質向上に寄与すると考えている。なぜならば、電源ケーブルの変更やクリーン電源の導入等による電源環境の強化はXLRケーブル等の変更よりも、音質変化の効果が顕著に表れたことをこれまで確認してきたからである。実際に全ての自宅のオーディオ機器にLUXMAN JPA-15000を適用したのち、クリーン電源のES-1200を導入した上でその音質の変化を目の当たりにしてきた。
今回は、LUXMANの電源ケーブルを一段階グレードアップした「JPA-20000」を導入したので、「導入の背景」や「一部の機器に接続した結果」と「JPA-15000との印象の違い」について述べる。
2. JPA-20000
■概要と背景
LUXMANは2005-2006年頃に創業80周年記念としてB-1000fやC-1000fを発表した。その際に付属の電源ケーブルとして新規開発されたものがJPA-20000と認識している。しかしながら、LUXMANの電源ケーブルとしてJPA-20000は市販されていなく通常の製品に付属されているJPA-10000とハイグレードの製品に付属されているJPA-15000までの市場扱いとなる。
個人としてもJPA-20000が付属されているC-1000fを導入しようと悩む時期があったがC-800fが創り出す音も気に入っているため何らかの機会でJPA-20000を触る機会があれば...と苦悩の日々であった。
ラックスマンちゃんワイにJPA-20000を売って...売ってクレメンス...
— うまうま (@umauma2010) 2018年5月1日
実際に、LUXMANにJPA-20000の取扱いの有無をサポート経由で質問をさせていただいたことがある。回答としては「申し訳ありませんが販売しておりません」であった。
ところが、今回掘り出し物を見つけようやくJPA-20000の導入に至った。
■JPA-20000の見た目
現在自宅で導入中のJPA-15000とJPA-20000の見た目上の大きな違いは、コンセント側に差込むアース用のピンが設けられているということと、ケーブル自体の太さである。自宅では、壁コンセントとES-1200のコンセントともに3Pコンセントに対応しているため問題はないが、これまでオーディオに関する電源でアースをとったことが無かったため多少の混乱があった(STAXのハムノイズ防止でSRM-727Aとプリアンプのアース端子間をアース線で繋いでみたりした程度)。
私は電気工学に乏しいため、アースをとることによる電源特性への影響についてはここで語ることはできない。(度々フォーラム等でアースについて議論されているものの、最終的には結論が出ずに個人の拘りや音の好みで議論が収束されているように思う。)
自身としてもあまりそこはシビアにならずに状況に応じて使い分けようと考えている。
3. JPA-20000の接続
JPA-20000を一部のオーディオ環境に接続し、音質を確認した。前提として、自宅の環境はいつものように以下としている。
はじめに機器に接続するにあたり、電源ケーブルを一箇所変更(JPA-15000を外してJPA-20000に変更)した際に音質の差が出やすい部分について検討を行った。*1
なお、試聴するヘッドホンは機器の状況によって出音が顕著に変化しやすいFocal UtopiaをP-700u側で代表とした。
① DA-06にJPA-20000を接続し、UtopiaとSR-009で出音を確認する
② P-700uにJPA-20000を接続し、Utopiaで出音を確認する
③ C-800fにJPA-20000を接続し、SR-009で出音を確認する
④ ES-1200にJPA-20000を接続し、UtopiaとSR-009で出音を確認する
以上の項目で試聴を行った。
4. 音質
再生ソフトウェアはFoobar2000*2。音源は、Pure-AQUAPLUS LEGEND OF ACOUSTICS-(WAV44.1kHz)の様々な収録曲。
Pure-AQUAPLUS LEGEND OF ACOUSTICS-
- アーティスト: Suara ほか
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① DA-06にJPA-20000を接続し、UtopiaとSR-009で出音を確認する
音の粒が揃った印象を受ける。ボーカルの息遣いがより分かりやすく変化した。中低域が強調され、若干音の解像度が上がり、曲の終盤における余韻が楽しめるようになった。基本的にはDA-06の性能を継承し、より曲自体の雰囲気とインパクトを強化する結果となった。
特に、エターナルラブでは曲の中に所々ある低音寄りの「ボワッ」は奥行きのあるインパクトのある音に、繊細な「カサカサ」は丁寧に優しく分離した形で表現された。JPA-15000ではなんとなく表現されていてUtopiaが辛うじて拾っていた音も、ある程度余裕を持った形で音楽を展開していたように見受けられた。
当初、DACの電源ケーブル変更が音質の向上に最も繋がるのではないかと考えていたため個人的にはこの時点で満足していたが、もしかしたら...と考えやり遂げることにした。
② P-700uにJPA-20000を接続し、Utopiaで出音を確認する
P-700uの電源ケーブルをJPA-10000からJPA-15000に変更した際の印象とよく似ていた結果となった。P-700u*JPA-20000は全体的にJPA-15000の音を底上げした形でより一つ一つの表現が派手に、曲自体を盛り上げるような印象を受けた。
自身としてはJPA-15000を適用しているP-700uの表現がちょうど良く、JPA-20000にすると若干ドンシャリに近付く形になってしまったため、こちらの接続は見送った。
※当ブログでは「ドンシャリしない解像度の高い躍動感のある音楽」を目指している。
③ C-800fにJPA-20000を接続し、SR-009で出音を確認する
中低域がよりダイナミックに躍動感が感じられ、②のような印象と似たようなものを感じた。SR-009で聴くと多少自然さが失われてしまったという印象であったことと、コンデンサ側に限られた接続となるためこちらも導入を見送った。
ただし、将来的にスピーカーを運用する場合やC-800fとパワーアンプ等を接続する場合はまた違った鳴り方をすると考えられ、一概にJPA-20000との組合せを切り捨てるという判断はできないと感じた。
④ ES-1200にJPA-20000を接続し、UtopiaとSR-009で出音を確認する
正直、一番適用の効果が薄いと思っていた組み合わせだが見事に覆す結果となった。まず、ひとつひとつの音色に艶がしっかりと出ており静かな曲に対しては静寂感が増し、反対に賑やかな曲は、破綻しないよう立体感のあるLUXMANらしい中低域の弾けた音を出すようになった。特にUtopiaは低音部分がより豊かに「ブワン」と震えるような深い音色を出すように鳴るように感じられた。
懸念していたのは、クリーン電源の強化により全体的に音自体が引っ込んでしまうのではないかという思いがあったがこれまでのポテンシャルは引き出しつつ、音は多少横に広がるようになった。また、曲の中で表現される前面に押し出る音はこれまで耳にあまり届いていなかったが、より一歩前へ出るようになり乾いた音またはしっとりとした音を非常に上手に使い分けて表現するようになった。
電源ケーブルは結局電源に宿るのか...と考えさせられる結果となり、最終的にJPA-20000は④の構成で組み込む形となった。
5. まとめ
今回はJPA-20000を導入し、様々な機器に組込みベストな構成を模索した。個人的にJPA-20000と最も良い組合せはES-1200となり、結果的にP-700uとC-800f側の両方に良い効果をもたらす形となった。
電源環境の変更は音質に良い効果をもたらすことが改めて確認でき、今後も非常に重要な要素の1つとして捉えていこうと考えている。
■おまけ
あなたの考える「ラックストーン」を定義し、どのような音質で存在するかについて、具体例を挙げながら説明せよ。(2017年・春)
— うまうま (@umauma2010) 2018年7月23日
*1:余った1本のJPA-15000は電子ピアノのMP11へ接続
*2:Roonを導入したのにFoobar2000に拘った漢