おうまさん

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令和4年プロジェクトマネージャ試験に合格 プロマネ未経験からの不合格→合格を徹底解説

1. はじめに

 私は情報処理・サービス業の会社に属する20代後半のSEである。完全独学で令和4年秋にプロジェクトマネージャ試験を受験し合格したため、合格に至るまでに行った学習経過等を振り返る。特に今回の試験では受験3ヶ月前に祖母が他界し、受験3週間前に投資の現物株で650万を損失するなど非常に厳しい環境下の中での試験となった。なお、プロマネ試験は今回で2回目の受験であり前回の試験では論文でB判定を取得していることから、論文でBからA判定にするための施策も含めて全体的に解説する。

 徹底解説であるため、主に午後試験においては実際に自身が提出解答した内容はメモしてあり、IPAの解答と照らし合わせると共に、午後Ⅱ論文においても解答したポイントを具体的に記載することで、よくある「薄い単なる合格体験記」に留まらない内容を意識して記事を構成する。

1回目の受験結果

2. 受験の目的

 顧客へシステム導入する前段としてまずは調達がかかり、場合によっては他社と競い合った上で構築業者が決定される。その際に顧客は調達仕様書を定義するが、その中に「作業要員に求める資格等の要件」として責任者となる者はプロジェクトマネージャの合格者であること、などITSSレベル4に相当する高度試験区分の合格を要件に挙げられる場合も見受けられる。民間へのシステム導入の際には馴染みがないかもしれないが、国や官公庁などの入札に関わる案件はこれらがほぼ盛り込まれていると認識している。

 私は、このような調達仕様書に記載される資格に合格した実績を創出し、活躍の幅を広げるきっかけとしておきたい思いから受験を行った。

 と、いいつつも世の中は金が全てであり資格手当が欲しい。しかし、状況が変わり弊社は資格手当が無くなった上にSIerという性質上、PMPプロマネが重視されており技術系の資格は趣味程度で捉えられがちな風潮にある。PMPは受験費用が高く、更新手数料もコスパが悪いためITSSレベル4である国家試験のプロジェクトマネージャ試験に合格することで社内における身の安全を確保する狙いがあった。

3. 情報処理技術者試験の受験履歴と筆者のスペック

 自身の情報処理試験受験履歴を以下に示す。情報処理技術者の受験は入社した2016春より開始している。なお、未受験は省略している。

受験年
受験区分
結果
2016春
合格
2017秋
不合格(午前Ⅱで後1問正解で合格)
2019秋
不合格(午前Ⅰで後1問正解で合格)
2020春
中止
中止
2020秋
プロジェクトマネージャ (PM)
不合格(午後Ⅱで論文B判定)
2021春
情報処理安全確保支援士 (SC)
2022春
不合格(午前Ⅱで後1問正解で合格)
2022秋
プロジェクトマネージャ (PM)
合格

 

 また、自身のITスキルを以下に示す。

・プロジェクトマネジメント未経験(プロマネには絶対になりたくない)

・プロジェクトマネジメントにおける品質評価は無駄だと思っている。監査や社内上層部による意思決定者が品質の報告からプロジェクトの妥当性を判断するのに必要な情報の根拠としていることは「正論」であるが、現場からしてみれば品質指標から外れたところで「○○を○○しているので問題ない」という定性・定量評価に対してコメントし、結局のところ全日本言い訳大会を開催しているだけである、というのが品質評価への所感である。

PMBOKを読んだことがないし興味がない

・プログラムを実装する際、ネットからコピーしたものをモジュールとしてそのまま利用し、実装したい機能に合わせて適宜プログラムを追加していく。はじめから自分で書かない。

・最短経路や二分木など用語は知っているものの、結局何に使うのか見出だせない

・午前問題に出てくる計算問題は、とりあえず答えから見る

...というように物事を論理的ではなく、漠然と感覚で捉え、プロジェクトマネジメントに対し情熱がない者である。

 

4. 午前Ⅰ

 午前Ⅰの勉強方法としては、自身の場合、過去7年分(春秋含む)の応用情報午前を6周でまあまあ張り合える。2020年プロジェクトマネージャの午前Ⅰ試験では、この勉強法で71.4点獲得し、免除権を確保している。今回のプロジェクトマネージャ試験では免除であったが過去の記事にて、勉強法を詳細に記載した。

リンク先の勉強法を結論だけ記載すると、

 ①まずはその年の問題を一周 (80問)

 ②間違えた問題は紙にメモして復習

 ③後日、再度その年の問題を一周

 ④間違えた問題は②の紙に上書き(ここで①で間違えた問題と同じ場合は番号に○をつける、新たに間違えた問題は②のメモに番号を追加する)

 ⑤後日、再度その年の問題を一周

 ⑥間違えた問題は②の紙に上書き(ここで①で間違えた問題と同じ場合は番号に☆をつける、③で間違えた問題と同じ場合は番号に○をつける、新たに間違えた問題は②のメモに番号を追加する)

 以上の内容を過去7年分行う。春秋分なので単純計算で14回分 * 80問 =  1120問の演習を行うこととなる。1日に1回分やると1時間程度で、2週間で1周できる勢いである。正直、これを学習スケジュールに盛り込むとなかなかキツい計画を強いられるため、本気で取りに行くのであれば免除が本来望ましい。

 ただし、IT用語や技術に自信ニキは何周もしなくても良いと思われる。自身の場合、たくさんの問題を解いていると「こっちの問題の答えはCなのに、この前つまずいた問題は答えAだったんだっけ...?」のように正しい答えがごっちゃになる場合がよくあるので、何周もすることによって不安を払拭している。

 午前Ⅰの問題演習は以下のサイトを利用。

 

5. 午前Ⅱ

 以下のサイトで過去のH21春からR3秋までの13回分のすべての過去問を5した。学習期間は8月中旬~10月中旬(試験前日)まで。

  午前Ⅱは1回分25問なので負担が小さく、1日に1回分を演習した。午前Ⅰと同様に、間違えた問題は紙にメモし、何度も間違えた問題は印をつけた。

 2回目の受験においては上記のような対策を実施したのにもかかわらず、60点というギリギリのラインで留まってしまった。ITの知識に対して関心がないのも要因のひとつであるが、ひとつひとつの定義が曖昧だと足元をすくわれるとともに、応用情報午前からの出題が午前Ⅱにおいてもよく出題されることが分かっているため、今後は午前Ⅱ対策においても応用情報の過去問に取り組んでいく予定である。

 足元をすくわれる午前Ⅱの例として、以下の問題を挙げる。

SDGsの説明として、適切なものはどれか。

1.企業が社会的責任を果たすべきであるとする考え方で、環境、人権などの活動に取り組むことを推進する考え方

2.地球環境などの課題において2030年を年限とする持続可能でより良い世界を目指す国際目標

 

 答えは2である。自身は1の方で回答し不正解となった。このような用語の定義が曖昧であると56点で不合格もあり得る展開となる。結局は勉強したところで運である。

 

6. 午後Ⅰ

 プロジェクトマネージャの試験対策本として、1回目の受験時に以下の本を購入していた。2回目の受験時においては購入をせずに、過去問を主体とした対策を実施した。本を活用する狙いとしては、「過去問の解答に対してなぜその解答になるのか」を重点的に探るためである。

 

 まずは、IPAの過去問題サイトからH28からR2までの5年分の過去問(問1~問3)を4周した。学習期間は7月中旬~10月初旬まで。その上で、一通り演習を終えた頃の10月上旬より、模擬問題としてR3の過去問を取り組んだ。特に、午後の過去問にも取り上げられていたアーンド・バリュー・マネジメント(EVM)におけるPV・AC・EVの計算や見方については重点的に学習した。これは結局、令和4年秋の午後には出題されなかったが、午前Ⅱに出題されることとなり、結局私はその問題を間違えた。

 プロマネにおける午後試験で困惑するのは「この問題に対しての解答は問題文から引っ張ってきていいのか、自分でアレンジして解答する必要があるのか」の線引が難しいところである。~のある活動はなにか、~の情報はなにか。という目的が見えうる単語で提示された問題は問題文から引用できる場合が多いが、「方針・対策・効果・狙いはなにか」など漠然とした単語で問われている問題は、問題文からかけ離れない程度に「いい感じでまとまる単語を自分で論述する力」が求められる。たとえば、ボキャブラリーとして「○○の度合い」、「段階的に詳細化」、「○○の実行の意欲が高まる」など大人の文章力がIPAの解答例に掲載される場合が散見される。こういった解答力は度重なる過去問を通じて得られる能力と気付きであるため、繰り返しの演習が望ましいと考える。

 このような解答力を踏まえ、実際に自身が令和4年のプロマネ試験で解答したものが以下のようになる。

 午後の論述を主とした試験の自己採点をしたところで無意味であるため、採点後の所感とはなるが、概ね採点結果どおりの73点というところで妥当性がある。

 

7. 午後Ⅱ

 午後Ⅱにおいては、1回目の受験時と2回目の受験時と同様に以下の書籍を大いに活用して試験対策を行った。書籍を活用した狙いとしては、本の中に記載されている論文例を暗記し、モジュールとして組み込んで活用することで論文ネタとして活用することを目的としたためである。なお、第三者に論文の推敲依頼をしたことがなく論文に関しても独学で実施した。学習期間は9月初旬~10月中旬まで。主に本を見ながら拾えるネタをノートにメモし、暗記する作業と実際に論文を1つ書き上げる対策を行った。

 1回目の受験で論文の評価がB判定となって落ちた理由を以下に示す。

・何からなにまでプロマネが全て行うような論述をしていた

→社内の業務リーダが行うこともプロマネ側で対処するような文を構成し、プロジェクトチームとしての活動が薄いように評価されたとともに、プロマネの役割を理解していないような評価がなされた

・○○プロセス、○○フェーズという工程ごとの作業を明確に切り分けられずに論文を構成し、まとまりのない論述をしてしまった

 私は、2回目の論文にて上記の内容を十分に是正した上で論述を行ったため結果的にA判定として評価がなされた。具体的な是正内容を以下に示す。

・何からなにまでプロマネが全て行うような論述をしていた

→「業務リーダに対し○○をするよう指示した。」「顧客のA氏に対して○○を提供するよう依頼した。」など人にぶん投げる論述を行い、プロマネ側で行うこととそうでないものを明確に分けて記述した。

・○○プロセス、○○フェーズという工程ごとの作業を明確に切り分けられずに論文を構成し、まとまりのない論述をしてしまった

→令和4年秋の問2においても、計画段階・実行段階というような問題文で出題され、それに合うようシナリオを頭で組み立てた。計画段階で実施する作業群と実行段階で実施する作業群を試験の紙に箇条書きで整理することで、工程毎にあった論述を意識することが出来た。よく論文対策において、問題文を読んでから話をどう組み立てるか整理してから論述を開始すること、というテクニックを見つけるが私はそのようなことをしていたら時間がなくなるので、組み立ては頭の中で記載をしながら流れで考え、どのようなことを書くかのみを論述前に箇条書きで整理することに留めている。

 全体的な論述ポイントとしては、「プロマネがその作業を行うにあたり、なぜそれを行うこととしたのか、狙いはなにか」を具体的に示しながら発生した事象に対してどのようなアプローチを行い、問題文に記載された内容に沿って誰が何をどのようにしたのかを論述している。問題文は例え、受験者が「??」となったとしても出題者がIPAとして度重なるレビューをした上で出題をしているのだから全てが正しく、神であることを忘れてはならない。問題文に対して反抗的な論述をすると、BからD評価となり得るので、問題文に対して「うんうんそうだよね」というイエスマンになって解答することが大前提である。そのような解答力を前提に、実際に私が午後Ⅱの問2で解答したものに近い抜粋論文例を以下に示す。※多少テイストを変えているので再現ではない

1-1 プロジェクトの概要、目標

 論述の対象は、A社における○○パッケージの導入における○○システムの構築である。私は情報処理・サービス業であるB社に属するプロジェクトマネージャとして参画し、プロジェクトを推進することとなった。○○システムは新たなバージョンがリリースされ更新が控えていることから既にA社に導入済みのパッケージ製品を一新して現状紙でしか行えていない○○システムの手続き業務を新システムで紙を使わずにシステム内でワークフロー化することをプロジェクト目標としている。~

1-2 ステークホルダが目標の達成に与える影響について

 新しいワークフローの機能において、A社の担当であるC氏が統括となり、随時A社社長に報告する形をとることとなった。当プロジェクトにおいては、主でプロジェクトの窓口となるシステム統括のC氏がプロジェクトの稼働判定承認を行うことから主要なステークホルダとして該当する。A社社長は現行パッケージにおける○○システムの手続き業務について紙運用に対し不満を持っており、C氏に対して○○システムの手続き業務においては完全ワークフロー化することがシステム稼働の必須条件であることが伝わり、プロジェクトの目標達成に影響をもたらすものとなった。従って、私は○○システムの手続き業務を完全ワークフロー化するプロジェクト目標を達成するために、次のような施策で顧客と積極的なコミュニケーションを行った。

2-1 計画段階におけるステークホルダの過大な期待

 私はプロジェクトの計画段階に先立ち、現行紙で行っている業務をワークフロー化するために必要なWBSを策定した。WBSを事前に策定した狙いとしては○○システムの手続き業務に関しての完全ワークフロー化という要求事項をもとに漏れなくA社とスコープを定義し、合意するためである。

WBSを計画段階でC氏に事前に共有したところ、「○○の業務に関するワークフロー化に向けたWBSが落とし込まれていない」との指摘を受けた。私は、社内の業務リーダに対し、C氏から指摘を受けた○○業務は○○システムの手続き業務以外であるサブシステムであり、今回のワークフロー化の対象外に位置することを確認した。

 この時点で、A社側は○○システムの手続き業務以外の完全ワークフロー化を視野に入れており、過大な期待を持たれていると判断した。同時に、プロジェクト目標の達成が妨げられるおそれがあると判断した。~

2-2 目標の達成が妨げられないように積極的に行ったコミュニケーション

 ~

 今回のスコープ内における手続き業務が○○パッケージ中のどこに相当するかを複数のサブシステムを図示してC氏へ説明することによりワークフロー化する対象のイメージを持ってもらうこととした。また、~

これにより、計画段階における過大な期待に対し構築プロジェクト内の当初スコープ範囲内で納まるよう調整し、当初の要求事項に則ったスコープの定義で再度構築範囲を合意する狙いがあった。

 ~

 提示した案に対してC氏より承認をもらい、結果的に上記に挙げた様々な施策とコミュニケーションにより、プロジェクト目標が妨げられないまま実行段階へ移ることが可能となった。

3-1 実行段階で生じた認識の不一致とその原因

 実行段階に先立ち、私は○○システムの社内業務リーダに現行のA社運用を示す○○システムの手続き業務における業務フローを作成するよう指示した。

 作成された業務フローやA社による要求事項の内容をもとにと○○パッケージが提供するワークフロー機能との間でフィットギャップ分析を行い、~ これにより、~を行う狙いがあった。

 実行段階に先立ち作成された業務フローと分析の結果をC氏に共有したところ、「○○システムの手続き業務には一部外部との連携が必要となるワークフローが必要となる見込みである」という指摘があった。私は社内の業務リーダに対し業務フローを見直すよう指示したところ、一部現行の紙運用の中で外部の機関とやり取りを行うA社独自の運用があることが判明し、業務フローの中に落とし込まれていないことが分かった。計画段階で検出できなかった理由としては、手続き業務の位置関係を明確にしながらも実際の業務の詳細までを落とし込んだ協議がコミュニケーションの不足によって行えていなかったことが原因として挙げられた。~

私はC氏から指摘のあった外部連携について実現しなかった場合はプロジェクト目標の達成が妨げられると考え、次のようなコミュニケーションを行うことで認識不一致の解消に努めた。

3-2 認識の不一致を解消するために積極的に行ったコミュニケーション

 私ははじめに、外部連携についてパッケージ開発部門の詳しい担当者とアポイントを取り、社内の○○システム業務リーダと外部連携に際して相手方に受け渡すパラメタとステータス等を洗い出すよう関係者に指示した。また、パッケージ標準で~

 その上で、顧客とのコミュニケーション不足によって生じた認識の不一致を解消するために、現行の運用フローと新システムのワークフローについて漏れがないかを確認することを意図とした週次の会議体を業務リーダとC氏の間で設定してもらい、進捗状況や今後の詳細スケジュールを協議することで認識不一致の解消に努めた。会議体の資料や議事録はプロジェクトマネージャを最終承認者として内容を確認し、月次の定例会においてもその内容について触れ、C氏と進捗状況を共有しながら都度、A社社長にもその内容を報告してもらうよう依頼した。

私は上記に論述した実行段階における様々なコミュニケーションにより、外部連携における現行運用の課題と新システム実現のための課題解決に向けた推進を確実に実施し、A社との認識不一致を解消させ合意を得ることができ、最終的にプロジェクト目標達成の見込みが得られたまま次工程へと進むこととなった。

 

8. まとめ

 今回は令和4年プロジェクトマネージャ試験に合格するまでの不合格から合格に至るまでの過程を示し、学習方法について具体的に明示した。高度情報処理試験は運の要素が強い。難易度どうこうよりも、結局自分の得意分野や取組みやすい問題文、解答の仕方によって向き不向きが年度によって違ってくると考えている。今回紹介した学習例を何度か過去に実践したとしても、不合格となっているのが高度試験である。逆に全然勉強してなくても合格する場合がある。情報処理技術者試験は士業ではなく、結局は肩書だけなのだから、合格不合格に一喜一憂せず、継続的な研鑽が重要であると認識している。

 プロジェクトマネージや試験に挑戦されている方や今後受験を検討されている方向けに参考となれば幸いである。

 

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